戸田建設、CMに「広瀬アリス」起用の深刻な背景 若手社員の「心の叫び」で経営トップが決断

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大谷社長はCM発表会での囲み取材において、次のように話した。「(CMの内容に)口出しはあえてしなかった。戸田のCMに俳優を起用するのか、と思うこともあったが、『社長の考えは古いよ』と言われ、若い人の意見を採用するべきだと考えた」。

社長は古い――。実は、この言葉は若手社員が、社長に直言したものだった。

ゼネコン大手は目下、タレントの起用やアニメーション仕様のテレビCMを次々と打ち出している。大成建設といったスーパーゼネコンだけでなく、西松建設、熊谷組などの準大手、中堅ゼネコンもこぞって展開している。

CMの撮影は建設中の「TODA BUILDING」の中で行われた。「普段は入ることがない建築中のビルでの撮影で、(柱などを)いろいろ見てまわった」と広瀬さん(撮影:尾形文繁)

就職セミナーで「学生ゼロ」を経験

この潮流の背景には、深刻な人手不足がある。ゼネコン業界は職人の高齢化が進む一方で、厳しい労働環境を敬遠して若者の流入が減っている。2021年の建設業就業者数は485万人と、ピークであった1997年から30%近くも減少した。ゼネコン大手は華のあるテレビCMを打ち出すことで、「きつい」「汚い」などの印象を払拭し、とくに就活中の学生に就労を促す狙いがある。

名門の戸田建設といえども、学生からの人気はけっして高くない。いや、むしろ人気が落ちている。「2020年ごろまでは、スーパーゼネコンと学生の人気で張り合えていた。ところが、最近は中堅ゼネコンと比べられるようになっている」と、人事部で採用を担当する田野倉咲良氏は吐露する。

本社を構える東京では、学生向けの就職セミナーにおいて、戸田建設のブースは満席になるケースが多い。だが、大阪や名古屋などに行くと、戸田建設の知名度はグンと下がる。

「誰も来ない」。田野倉氏は地方で開催した建設業界の就職セミナーで、忘れられないできごとがある。午前中だったとはいえ、学生がひとりも来ない「学生ゼロ」の時間帯があったのだ。

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