歴史問題は「安倍談話」で終わるわけではない 韓国が満足する談話であっても問題は続く

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――安倍首相訪米について韓国の反応はどうだったか。朴槿恵大統領に対しては、安倍首相と会談する前に“慰安婦”問題を解決するために日本にもっと強く言うように圧力がかかっているようだ。一方、中国は安倍首相に対して少し軟化してきているようだが。

中国の対応の軟化については、それが永続的な変化になるのか、単なる戦術的なものなのか、疑問が残っている。習近平国家主席は、短期的には異なる優先順位を持っている。日本とは一時的な休戦を望んでいるように思われる。その疑いを持つ理由は、歴史問題は構造的なものであり、決してなくなることがないからだ。紛争の激化が一時的に緩和するとしても、中国・韓国にとっては自国のステータスに関わる長期的な関心事だ。そのことを反映した問題は、簡単にはなくならない。

中韓両国が強くなるにしたがって、日本が過去において彼らに与えた屈辱をしっかり受け止めないことに対する反感は強くなるだろう。それは強力な内政および強力な国際的な道具としても強くなる。日本から譲歩を取り付ける手段として有効だからだ。

一方、そのコインの裏側には、日本の“謝罪疲れ”がある。日本の指導者にとっては、何か劇的に新しいものを提供するように、国内の圧力が強くなっているわけではない。そのため、この根底にあるダイナミズムが消えてなくなるとは思えない。紛争の小康状態や和解に向けての一時的な動きはあるだろうが、和解の永続性ははるかかなたにある。

「自主性拡大キャンペーン」には反対勢力も

――安倍首相にとって、新ガイドラインは日米同盟をさらに強固にするために立案されるのか、それとも日本がもっと自主的力量を発揮する方向をめざすことになるのか。

安倍首相がもっと自主的力量の発揮を望んでいることは明らかだ。ただ、当面は新ガイドラインを日米同盟の強化につなげると見ている。現実には、強力な自主性をめざす政策に対しては内政的に大きな障害が残っている。戦後の安全保障政策は日米同盟の枠内に押しとどめられてきた。その制限を緩めることは政治的に大きな自主性を主張する勢力にとっては容易なことだ。ただし、これら自主性拡大キャンペーンには公然と反対する勢力がある。

公然と自主性拡大のキャンペーンを行えば、中韓両国と同様に米国からの反発をも引き起こす。しかも、それには日本国内の反対も多い。自主性拡大を支持する勢力にとって、これまで抵抗が少なかったのは、日米同盟内での日本の役割拡大とみなされてきたからだ。同盟内での新しい力量を形成するものだったのだ。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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