「原発問題はEVの普及を妨げない」日産ゴーン社長が会見
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は12日、記者団とのインタビューに応じ、「原発問題があっても、電気自動車(EV)に対する追い風は変わらない」などと答えた。主なやりとりは以下の通り。
−−震災から2カ月、復旧の状況をどうとらえている?
日本国民の取り組みには強い感銘を受けている。日産でも最も被害の大きかったいわき工場(福島県)は、余震があったにもかかわらず、4月18日にはエンジンの生産を再開した。これは日本の現場力の強さを示しているし、現場のマネジメントが強い証拠だ。
−−昨日の決算発表で、生産正常化のメドを10月と示した。トヨタ自動車やホンダなどに比べて1カ月程度早い見通しだが、その理由は?
他社と比べることはできないが、海外で現地生産が進んでいることが一つの理由かもしれない。日産では中国やロシア、タイなど新興国でも生産の現地化を進めてきた。ただ、根本的には現場が強いことだ。震災後、開発や生産、購買などのチームワークはすばらしいし、ありえないような労働時間の中で一丸となって復旧に取り組んできた。こうした現場力の強さがあるからこそ、強気になれるのだ。今は1カ月前よりもずっと楽観的だし、一カ月後もさらにそうなるだろう。
−−持ち株会社設立など仏ルノーと資本関係を見直す考えはあるのか。
まったくタブーではないが、優先課題は低いと考えている。まず重要なのは各社がコア事業をまず発展させることだ。その後の課題になる。
−−電力問題や円高など日本のモノづくりを取り巻く環境は厳しい。
電力問題などによって、日本のモノ作りに対するハードルは高まるだろうが、それによって、決断やコミットメントは変わらない。国内生産100万台の死守は非常に固い決断だと強調したい。高付加価値や先端的技術のモノ作りは日本で行うし、世界に対するヘッドオフィスは日本だ。今後多くのEVやバッテリー、高級車「インフィニティ」も国内で作る。100万台生産の根拠は十分にある。
−−原発問題はEVの普及にマイナスとはならないのか。
確かに停電の際に充電はできないが、停電になると給油もできないんですよ!給油ポンプも電動ですからね。EVならばバッテリーに蓄電できる。今後はバッテリーが根本的な重要技術になる。原発問題があっても、EVに対する追い風は変わらない。
今後さまざまなエネルギー議論が起きるだろうが、電力は原子力だけでなく、石油、石炭、天然ガス、風力、太陽光などさまざまな選択肢がある。一方で内燃機関はガソリンが枯渇すれば動かすことができない。
日産のEV戦略に何ら変更はない。今後は小型商用車「NV200」のEVを投入する。NV200は先日、米ニューヨーク市のタクシーとして全面採用が決まったが、このEVバージョンの投入が、ニューヨーク市の決断の一つだった。なお、NV200のEVはメキシコで生産する。NAFTAでの生産は、ニューヨーク市の条件の一つだった。
(並木 厚憲 =東洋経済オンライン)
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