この収益力の差は、財務内容にも影響が出ています。貸借対照表(13~14ページ)を見ると、セブンの自己資本比率は46.4%と非常に高い上に、有利子負債も9482億円というイオンの半分の額しかありません。
2大小売業と言われているイオンとセブンですが、収益力や財務内容という点ではかなり差が開いてしまっているのです。
イオンとセブン、差がついた「3つの理由」
イオンとセブンの間で明暗が分かれてしまった理由は、大きく分けて3つ考えられます。
ひとつは、先ほども触れましたように、スーパー事業とコンビニ事業の収益力の差です。セブンで見た場合でもスーパー事業の売上高営業利益率は1%程度しかないものの、コンビニ事業は10%近くありました。コンビニ事業に依存する割合の高いセブンの方が、収益力が高くなるのは当然のことです。
2つめは、コンビニの“ミニスーパー化”です。近年、一部のコンビニでは、地域の高齢者のニーズをくみ取って、お総菜などのラインナップを増やしました。しかも、コンビニはスーパーよりも店舗数が多いですから、アクセスしやすいという利点があるのです。
こうしてコンビニがミニスーパーになりつつあることで、スーパーのシェアを食っている部分があるのではないでしょうか。
3つめは、戦略の違いです。冒頭でも触れましたが、イオンは昨年4月の消費増税によって、消費者は低価格商品を求めるだろうとの狙いから低価格路線を進めました。
イオンのPB「トップバリュ」の商品ラインナップを増やすことで、より低価格の商品を提供しようとしたのです。ところが、これが裏目に出てしまいました。消費者にとっては「PB商品しかない」「真新しくない」「安いだけの商品」という印象が強くなり、イオン自体があまり魅力的ではなくなってしまったのです。
一方、セブンでは、質を高めた高価格商品「セブンプレミアム」のラインナップを増やしました。脱デフレ型の戦略に向かったのです。
意外にも、消費増税の後、消費者の行動が少し異なってきたとの報道もあります。安いだけの商品は買わず、そこそこ高品質でお得な「値ごろ感」を重視しているというのです。供給過剰が続く中、消費者は商品の「質」を求め始めているのかもしれません。
セブンは消費者のニーズをうまくくみ取って高品質、高価格に向かうことで、客数と客単価が伸び、その結果、収益力も高まるという好循環ができているのです。
このままの戦略を続けていては、イオンはなかなか厳しい状況が続くのではないでしょうか。設備投資の見直しだけでなく、これからどのような商品を打ち出していくのか、さらには、どの業態や海外も含めたどの地域で展開するのかの次の戦略に注目です。まだ利益は出ていますから、逆転のチャンスは十分にあると思います。
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