ソフトバンク、「後継指名」に透ける危機感 世界企業へ向けて投資加速だが課題も

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まず、グループの子会社群に、高成長を期待できる企業が少ない。主力の国内モバイル事業は、代理店への手数料削減を進める一方、端末や料金プランの差別化が進まず、大幅な契約の伸びを見込めない。

“キャッシュマシーン”のヤフーも成長は鈍化。2014年度に891億円の営業利益を稼いだ、スマートフォンゲームのガンホー・オンライン・エンターテイメントは自社株買いを行い、6月から非連結企業となる。

そして最大の課題は、2014年10~12月期に21.3億ドルの減損損失を計上した、米携帯3位のスプリントだ。低価格戦略を徹底する同社は、15年1~3月期に高単価のポストペイド(後払い)契約で21万件の純増を記録した。

ただし貢献したのは、34.9万件の純増だったタブレット端末。タブレットよりも毎月の単価が高い携帯端末は、20.1万件の純減と苦戦が続く。

スプリント4位転落も時間の問題

スプリントは優良顧客を狙い、上位2強の米ベライゾンと米AT&Tのユーザー向けに「乗り換えると毎月の使用料金を半額にする」という大胆な戦略を打ち出したが、思うように獲得が進まない。好調なTモバイルUSが契約数で29万件差に迫り、4位転落も時間の問題だ。

孫社長は「次世代のネットワーク作りに自信が出てきた」と強調する。ただ、米格付け会社スタンダード&プアーズのアナリスト、アリン・アーデン氏は「価格戦略では低所得層が加入してしまうため利益が伸びにくい。欠点である通信品質の改善にも2~3年かかる」と、現状の厳しさを指摘している。米国市場では、スプリント売却の観測も飛び交うが、買い手探しも容易ではない。

後継者への支障なきバトンタッチを実現するためには、再び強力な成長路線を築く必要がある。今後、アローラ氏が臨む海外戦略は、跡継ぎとしての素質を問われる厳しいテストになりそうだ。

「週刊東洋経済」2015年5月23日号<18日発売>「核心リポート01」を転載)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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