ヤフー、スマホ時代へ挑む投資戦略とは 14年度は土俵際で連続増益を死守したが…
「徐々にスマホシフトが出来てきている」。5月1日に発表されたヤフーの2014年度決算会見で、宮坂学社長はこう胸を張った。
事前の会社予想は1996年の創業来、初となる営業減益だったが、フタを開けてみれば、売上高は前年比4.9%増(4284億円)、営業利益は同0.4%増(1972億円)と土俵際で踏みとどまり、18期連続の最高益(2014年度からは国際会計基準)を達成した。主に第4四半期の広告事業が想定より好調だったことが、一転増益をもたらした。
スマホでも「使われます」
ヤフーはスマホの時代にも、力を持ち続けることができるのか――。かつてのような”覇権”を握ってはいないヤフーに、たびたび投げかけられる疑問だ。これまではパソコンのポータルとして圧倒的な強さを誇り、広告事業を中心に年々収益を拡大してきた。しかしこの数年で急激にスマホが普及。今後の成長性が問われる状況だ。
この疑問に対して、宮坂社長は会見で、「『スマホでも使われるのか?』という問いには『使われます』という答えが出せつつある」と述べて、環境適応は進んでいると強調した。
確かに、決算に合わせて発表されたヤフー閲覧者のデバイス別構成比を見ると、2014年度第4四半期はスマホから閲覧するユーザーが、前年度からおよそ1割増え、全体の約6割を占めている。3年前、2011年度の同時期には約2割だったことからすると、大きく数字を伸ばしてきた。
収益柱の広告関連事業でも、足元では売上高の3割超をスマホ経由で実現し、スマホシフトが奏功しつつあることが伺える。有料会員数も初めて1000万人を超えた。
そんなヤフーが今回、新たに強調したのが、「将来の事業基盤を強化するための先行投資」。投資先の事業として挙げられたのは、ネット通販の「Yahoo!ショッピング」と、4月に立ち上げたばかりの「Yahoo!JAPANカード」だ。
ショッピングでは有料会員向けポイント還元の強化キャンペーンをヤフーの負担で実施。カード事業では2015年度末の会員数を、現在の60万人から140~160万人に増やすため、年間40億円のマーケティング費用を投下する。広告関連事業やオークション、有料会員サービスといった現在の収益源の安定成長を図る一方で、将来への布石を本格的に打ち始める。
業績見通しは立てず
コストが先行する投資は、業績拡大の足を引っ張るのも事実だ。実際、今回の決算会見では一つ、大きな変化があった。これまで掲げてきた「201X年3月期までに営業利益3300億円」という目標のスライドが、姿を消したのだ。
宮坂氏は「非常に事業環境が変わってきた。その一方で、いい意味で事業機会が増えてきているのでしっかり投資をしていきたい」と説明。「(利益目標)実現の時間軸については、少し後ろにずれる可能性はある」と明らかにした。
また、その年の売上高や営業利益など、具体的な予想数値も公表されなくなった。今までは通期決算発表の際に、上期までの業績予想が示され、第2四半期以降は、次の四半期までの業績予想を開示していたが、2015年度からは「市況の影響を大きく受けるFX事業関連収益を除いた連結売上高・営業利益は平成27年3月期を上回ると見込んでおります」との定性的な情報のみとなった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら