日経平均株価に強気になってよいこれだけの理由 ついに「名目GDP600兆円」が視界に入ってきた

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ここで改めてGDPデフレーターについて解説をしておくと、ひとことで言えば「交易条件を加味した物価指標」だ。交易条件とは海外と取引する際に生じる「損・得」、すなわち貿易での稼ぎやすさを示す指標の1つである。それは輸出価格を輸入価格で割った相対価格で数値化される。

こうした点において、同じ物価指標でも、単純に表面価格を集計して作成される消費者物価、企業物価などとは性質が異なる(厳密に言えば消費者物価と企業物価の一部品目については品質の改善・劣化を加味した調整が施されているため、必ずしも表面的な価格ではない)。

「良質」なインフレの正体とは?

ここで、原油が上昇した場合を例にとって、GDPデフレーターがどう動くかを説明しよう。先に結論を述べると、通常は輸入デフレーター上昇によるGDPデフレーター全体への下押し効果よりも、個人消費や設備投資など、その他項目の押し上げ効果が低くなるため、GDPデフレーターは低下する。

これを理解するためには、GDP統計において「輸入」が控除項目であり、符号が逆転するという計算方法を知る必要がある。GDPは国内総生産だから、作成する際は、海外で生産された輸入品は控除する必要があるからだ。したがって輸入が増加すれば、その分だけ国内総生産は減少するように計算される。同じ考えで輸入デフレーターが上昇すると、その分だけGDPデフレーターが低下するように計算される(外から来たインフレを取り除くイメージ)。

原油を輸入に頼る日本において、原油価格上昇は交易条件の悪化そのものであるから、日本全体の付加価値の総額は圧迫され、付加価値の単価とも言うべきGDPデフレーターは低下する。

換言すれば、原油価格上昇に由来する外生的なコストプッシュ型インフレは国内において付加価値デフレの状況を生み出すということだ。反対に2023年4~6月期のように原油価格が下落すると、GDPデフレーターは上昇することが多い。このような付加価値の総額を膨らませるインフレは「良質」なものと捉えることができる。

GDPデフレーターがプラスの状態は企業収益の拡大をもたらし、株価上昇に貢献する。そもそもGDPが付加価値、すなわち企業の粗利益の合計に近い概念であることを踏まえると、名目GDPが増加する局面で企業収益が拡大するのは当然の帰結かもしれない。

それゆえに企業収益の通信簿である株価と名目GDPには長期的な連動性が確認できる。ここで改めて名目GDPと株価の関係を超長期に俯瞰してみると、1950年代から1990年代前半まで名目GDPが順調に拡大するのに沿って株価は右肩上がりに上昇してきた。

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