また見たい「最上川の車窓」、山形ご当地鉄道事情 長期運休路線も…ローカル線で旅する名作の地

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南北に細長い山形盆地をさらに北に進む。新幹線も停車する大石田駅は、かの銀山温泉の玄関口。といっても、駅前に温泉街があるわけではなく、バスに乗り継いで山に分け入った先である。大石田駅から少々山を抜けると新幹線の終着・新庄駅へ。山形盆地よりはだいぶ小さい新庄盆地の中核で、東に陸羽東線、西に陸羽西線が分かれる山形県北部の交通の要衝である。

陸羽東線
陸羽東線は鳴子温泉へのアクセス路線だが、山形県側は運転本数が少ない。写真は宮城県内(撮影:鼠入昌史)

東北本線の小牛田駅と結んでいる陸羽東線は途中にこけしでおなじみの鳴子温泉などがあり、陸羽西線は「五月雨を あつめて早し」の最上川沿い。芭蕉気分の最上川下りを楽しめるのも陸羽西線の沿線だ。どちらもいかにも東北の山中らしい車窓が楽しめる絶景路線である。

……などといいつつも、どちらも超のつくローカル線。陸羽東線は鳴子温泉へのアクセスも宮城県側がメインになっていて、奥羽山脈を跨ぐことになる鳴子温泉以西は運転本数がぐっと少なくなる。

道路整備のために運休

陸羽西線に至っては、並行する高規格道路整備のために2022年5月から長期運休中だ。2024年度中に道路の工事が終われば運転を再開するそうだが、明らかに“ライバル”である道路整備のために運休するあたり、ローカル線の置かれている苦境が象徴されているといっていい。

陸羽西線は日本海側に出ると、余目駅で羽越本線と接続する。余目駅から北に行けば酒田、南に行けば鶴岡だ。山形県内でいちばん人口が多いのは県都・山形市で、それに次ぐのが鶴岡市。さらに第3位に酒田市が入る。

鶴岡・酒田の両都市は江戸時代には譜代の重臣・酒井氏が治めた庄内藩の領内で、日本屈指の米どころとして栄えた。鶴岡が城下町で行政の中心、最上川河口の酒田が北前船の寄港する商業の中心だった。そうしたわけで、県都の山形に次ぐ規模の都市圏をいまも形作っているというわけだ。陸羽西線が余目という中途半端なところで羽越本線に接しているのは、酒田・鶴岡の中間、という思惑があったのだろうか。

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