東日本大震災による工場休止で雇い止めも、“雇用危機”再来の現実味


行政も一時混乱 特例措置に限界も

かつてない規模の災害に、行政も混乱を見せている。実は法律上では、今回のような天災や計画停電など不測の事態においては雇用主に休業の責任はなく、労働基準法に定められた休業手当を支払う義務はない。が、厚生労働省が震災直後の15日、あらためてこの旨を通達したところ、問い合わせが相次いだ。その後は一転して人材派遣協会や日本経団連に対し、震災などで事業が縮小した場合も可能なかぎり雇用を継続するよう、要請文を送った。

並行して、震災による雇用への悪影響を緩和するための特例措置も相次ぎ打ち出した。通常、離職後でなければ受け取れない失業手当の受給資格を一時離職者にも認めたほか、受給申請に必要な手続きを簡略化。雇用主が従業員に支払う休業手当の一部を国が補助する雇用調整助成金の適用条件も広げた。企業倒産によって支払われなかった賃金を国が立て替える未払い賃金立替制度についても、周知徹底に取り組んでいる。

しかし、これら制度には限界もある。そもそも特例措置の対象は、被災企業や、契約期間中に解雇・休業になった従業員が中心だ。一方、派遣労働者は前述の木下さんのように、1~2カ月の短期契約を繰り返しているケースが多く、今回のように震災の影響が疑われる場合でも、通常の契約期間満了と同じように扱われかねない。

また、事業所が直接被災した場合、雇用主が従業員に休業手当を支払う義務はないが、部品不足や物流停滞による操業悪化を理由に休業を命じる場合は支払い義務が発生することもあるなど、法律そのものも複雑だ。今後、夏にかけては、節電対策として休業した場合の補償も課題となりうるだろう。

連合の山根木晴久・非正規労働センター総合局長は震災以降、「計画停電など間接的被害による操業停止の影響を最初に受けるのは、非正規労働者だということを痛感した」と打ち明ける。「本格的に震災の影響が出てくるのはこれからだ。非正規労働者が一方的に犠牲にならないよう対策を打つとともに、有期労働とは何か、もう一度考え直す必要がある」。

リーマンショックでは、輸出産業を中心に多くの労働者が職を奪われた。大震災が新たな
雇用危機の引き金にならないように、行政などには迅速な対応が求められている。

(小河眞与 =週刊東洋経済2011年5月14日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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