東日本大震災による工場休止で雇い止めも、“雇用危機”再来の現実味

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東日本大震災による工場休止で雇い止めも、“雇用危機”再来の現実味

東日本大震災は雇用情勢にも暗い影を落とし始めている。

自動車部品メーカーの日立オートモティブシステムズの群馬事業所で派遣社員として働く木下康春さん(45)は3月31日の夜、派遣元の担当者から、4月末で現在の職場では契約を更新しないと告げられた。震災で、納入先である完成車メーカーの生産計画が見通せなくなったことが理由だ。「もう10年近く製造業派遣で働いているが、初めて。前日の朝礼では、普段どおりのシフトが発表されていた。“雇い止め”は寝耳に水」と動揺を隠せない。

派遣元の担当者は「5月以降も雇用を維持するよう、最大限努力する」と言うが、次の職場が見つかる保証はない。日々、不安は募るばかりだ。

派遣先にも言い分はある。3月に生産台数がピークを迎える自動車業界では例年、4月から5月にかけて人員圧縮を行うのが一般的だ。「生産減のタイミングに震災が重なり、受注の見通しが立たない。雇い止めは法の範囲内でのやむをえない措置」(同社)と話す。木下さんらを直接的に雇用するのは派遣元であり、もともと契約は1カ月更新だ。

被災地から全国へ 冷え込む雇用情勢

雇用情勢の悪化は、被災地域から全国各地へと広がりつつある。

非正規労働者らの個人加入による労働組合「派遣ユニオン」では、震災を理由にした休業や解雇に関する相談が引きも切らない。関根秀一郎書記長は「相談件数は(2008年の)リーマンショック時を超える規模。影響を受けている業種も地域も幅広い」と語る。島根県の自動車関連メーカーで働く派遣社員から雇い止めに関する相談が寄せられたほか、東北地方のコールセンターでも規模縮小に伴う人員削減があった。関根書記長は「当面は混乱が続く。派遣切りの後、期間工や正社員にも影響が広がるのでは」と見る。

東京都労働相談情報センターでも3月14日から1カ月間で、震災に関する雇用相談が490件に上った。窓口で対応に当たる中野誠一・労働相談係長によると「震災直後は大半が休業に関する内容。しだいに解雇の相談が増えてきた」と言う。「地震で電車が止まり、会社の許可を得て在宅で働いていたら退職を促された」「会社の建屋にひびが入り、修理におカネがかかるから辞めてもらうと言われた」など、雇用主の過剰反応や震災に便乗した不当な解雇と思われるケースも多い。


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