半導体のロームが3000億円と弾く「東芝の価値」 パワー半導体の「販売・人材・技術」で連携か

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これだけ一気呵成に投資を進めれば当然、運営に必要な人材もかなりの規模で必要になる。まとまった数の技術者を確保するために、「東芝も含めパワー半導体を手がける企業との連携を検討するのは無難な動き」(冒頭の関係者)といえる。

東芝との協業となれば、「次世代パワー半導体」における競争を勝ち抜くうえでもメリットになりそうだ。

次世代パワー半導体では、従来のシリコンに代わってSiC(炭化ケイ素)を材料に用いる。シリコンを使った半導体よりも、高い電圧に耐えられ、電力ロスも抑えることができる。その特性からEV(電気自動車)での採用が進んでいる。

世界トップを目指すSiCでもメリット

ロームは2025年度に世界シェア30%のトップメーカーを目指すと公言。足元で300億円程度の売上高を同年度に1300億円に伸ばすことを掲げるなど、鼻息が荒い。

先述した福岡と宮崎での大規模な投資も、すべてSiCパワー半導体の増産に向けて進められているものだ。

オムディアによると、2022年時点でロームは世界シェア5位。日本企業では最高順位だが、約4割のシェアを握る1位のSTマイクロエレクトロニクス(スイス)など海外勢との差は大きい。

ただ、ロームは日本勢で唯一、材料から半導体チップまでを一貫生産できる強みを持つ。材料のSiCウェハー(基板)を手がけるドイツのサイクリスタルを2009年に買収。安定調達が難しいうえ、SiCパワー半導体のコストの大半を占めるとされるSiCウェハーを内製化し競争力をつけた。

SiCウェハーに関してロームは以前から、「競合にも供給することで製造原価を下げていきたい」(IR担当者)というスタンス。東芝向けのSiCウェハー供給が拡大すれば、コスト競争力の強化に直結する。

SiCウェハー製造において重要な技術を取り込める可能性もある。

東芝のグループ会社には、SiCウェハーの製造に欠かせない「エピタキシャル成長装置」を製造するニューフレアテクノロジーがいる。東芝との協業・連携にニューフレアとの協業・連携が含まれてもおかしくない。

ロームは自己資本比率が8割を超え、これまで実質無借金経営を続けてきた好財務企業だ。東芝の買収に拠出する計3000億円は借り入れを中心に賄う。財務的にはかなりのインパクトとなる。

人材面に加え顧客開拓や生産技術などそれぞれの分野で、3000億円という巨額投資を正当化する成果が求められそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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