「Uber EatsのCM」大都市圏に集中する深刻事情 「テレビ離れ」とエリアを吟味する新しい広告主

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CTVとはConnected TVの略でネットにつながったテレビCMの市場だ。日本でもTVerやABEMAをテレビ受像機で見る人が増えている。そこでもテレビCMが流れるわけだが、アメリカではその広告市場がすでに旧来のテレビCM市場の3分の1程度に達し、ゆくゆくはテレビCM市場の落ち込みを補って余りあるほどに成長すると予測されているのだ。

このCTV市場の中身はさまざまで、アメリカではhuluも広告付きで視聴されていたり、FASTと呼ばれる番組がずっと流れ続けて合間にCMが流れるサービスも急成長している。

さまざまな新サービスがひしめき合って広告市場として成長し、テレビ広告市場全体を押し上げているのだ。

TVerに番組を積極的に出すべき

だからローカル局はまず、TVerに番組を積極的に出すべきだ。在京在阪キー局が作ったプラットフォームなのでローカル局の番組は埋もれがちだと、躊躇する声もある。だが先述のさんいん中央テレビの「かまいたちの掟」がTVerで人気番組になり認知が高まった結果、FODやLeminoなどにも売れて収入が増えたことも先の記事で書いた。やってみたから得られるものがあった。TVer全体も成長が期待できるのだから、番組を出さない選択はないと思う。

だからといって、TVerに託せばもう安心、ということでもない。ローカル局主体のプラットフォームも構想すべきだ。中京地区のテレビ局が開発したエリアの共通プラットフォーム「Locipo(ロキポ)」は、まだまだ発展途上だがローカル局の可能性を示してくれる。アプリをダウンロードするとこの地域のニュースがパッと視聴できるし、もちろん多彩な番組も見られる。

さらに「ロケマップ」の機能では、自分が今いる場所近辺のお店情報が、過去に各局が情報番組などで取り上げた映像で見られる。ローカル局は膨大な地域情報を持っており、それを生かすことでそこに住む人々に放送とは別の形で情報を届けることができる例になっている。

「放送」の形態は、どんなに手間をかけて番組を作っても一度流せばそれで終わり。ビジネス機会もオンエア時だけだった。だが映像は各局にストックされている。ネットを使えばそれを二度三度、生かすことができる。

そこにどんなビジネスを生み出せるかが、ローカル局の生き残り方の原点になる。アメリカの業界が、さまざまなサービスを生み出して「CTV市場」により再活性化しているように、日本も小さな試行錯誤の膨大な組み合わせで似た状況を生み出せる可能性がある。個々のローカル局が、あるいはローカル局同士で力を合わせてさまざまなトライアルに投資すべき時だ。削減だけでは、どこにも未来は見えてこない。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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