「Uber EatsのCM」大都市圏に集中する深刻事情 「テレビ離れ」とエリアを吟味する新しい広告主
在京キー局以外にも上場し決算を発表する局はあるが数は少ない。そのためローカル局の実態ははっきり把握できないのだが、聞こえてくるのは「格差」が生じていることだ。関東地区、関西地区、中京地区のいわゆる「東阪名」と、それ以外の県単位のローカル局との間で、特にスポット受注に差ができているのだ。
ローカル局でスポットCMを流す企業は、全国に支社や営業所を持つメーカーが多い。スーパーやコンビニなどの量販店で商品を売るためには、津々浦々でCMを流す必要があるのだ。そういった企業は「ナショナルクライアント」と呼ばれ、全国のテレビ局が大事にしてきたお得意様だ。
見ない日はない「めちゃコミック」「UberEats」
ところが最近、新興IT企業が広告主として浮上してきた。新しいサービスをスマホやPCに誘導するようにCMでアピールしている。このタイプのCMは見るとすぐにスマホで登録したりダウンロードできる。広告主としてはCMを流すと即反応が得られるので、テレビは直接的に顧客を刈り取る媒体だ。ただし、すぐに結果が出る分、反応が薄いCM出稿はしない。
スマホに落とし込むサービスの多くはターゲットが若い世代。CMを流すエリアに若い人が多くないと効果が出ない。となると、大都市圏以外では効果が薄いことになってしまう。そのため、東阪名にCM出稿が集中し、あとは北海道地区、福岡地区あたりまでで他のローカルにはスポットを流さない傾向がある。
大都市圏に住んでいると見ない日はないほどの「めちゃコミック」「UberEats」「楽楽明細」などのCMが、エリアによってはほとんど流れていないのだ。
在京キー局のスポット収入は前年比でマイナス数%の局が多かったが、ローカル局になるほど、もっと下がっているようだ。その原因が、こうした新しい広告主によるデータ重視のドライなエリア峻別にある。
人々の「放送離れ」と、エリアを吟味する新しい広告主。この流れは当面止まりそうにない。ローカル局の中には昨年度すでに赤字局が出てきたし、今年度もいっそう厳しい。そこで、経費削減に走ることになる。赤字をできるだけ回避したいからだ。
だが赤字になるからと経費を削減するのは本当にローカル局にとって正しい経営判断だろうか。今必要な考え方は、今年度の赤字を避けることより、5年後10年後も事業を継続できるかだ。ただ経費を下げるだけでは収入下降とのいたちごっこで、削っても削っても赤字が続くだけだろう。
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