東急東横線の指定席「Qシート」は誰が乗るのか 導入で「沿線価値向上」、ターゲットは横浜市民?

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コロナ禍によるテレワークの浸透などで鉄道の通勤利用者が減少する中、座席指定車両や通勤客向け特急列車は「増収策」として注目されることが多い。だが、東横線Qシートの導入検討が始まったのはコロナ禍よりも前だ。

クロスシート状態のQシート
クロスシート状態の座席。Qシートとして運用する際はこの状態となる(記者撮影)
Qシートのコンセント
コンセントは全席に、カップホルダーは一部の席を除き設置している(記者撮影)

東急電鉄鉄道事業本部運輸部運輸計画課の橋詰航季氏によると、検討を開始したのは大井町線でQシートの運行を開始した翌年の2019年冬ごろ。「大井町線で多くの方に利用いただいていること、東横線のトータルの利用者数を考えると同線でも着席ニーズは高いのではないか」としてスタートした。

ターゲットは横浜方面への長距離客

利用者層として想定しているのは、渋谷から横浜、さらにその先のみなとみらい線内までの利用者だ。橋詰氏によると、大井町線のQシートも約40分かかる大井町―長津田間の直通利用が多いといい、「それと同様の考え方で、長距離の利用をメインターゲットと考えている」と話す。

渋谷―横浜間は、グリーン車を連結したJR湘南新宿ラインが競合する。以前は遠く離れており不便だった同線の渋谷駅ホームは、2020年6月に山手線と並ぶ現在位置に移動して乗り換えの利便性が向上。東横線にとってはライバルの競争力が高まった。

だが、Qシートの導入にあたっては、「当社は運賃面ではJRより安価な一方、所要時間は長いなどサービスの質が異なると考えており、とくに意識はしていない」(橋詰氏)。Qシートを連結する列車を最速の特急や通勤特急ではなく、停車駅の多い急行としたのも、「途中駅のお客様にも多く利用していただけるという点を考慮した」という。他線との競合ではなく、あくまで同線の利用者に対するサービスが狙いだ。

車両や運用については、先行する大井町線の事例を基にしている。車両数は7両中1両の大井町線に対し、路線自体の利用者数の多さから10両中2両に増やしたものの、座席などの内装は基本的に同じ。平日夜の下り列車のみの運行である点や、一律500円の指定席料金も共通だ。また、大井町線では折り返しをQシートとして運行する上り列車は、折り返しに要する時間を短くするために一般の列車ながら座席をクロスシートの状態で運転しており、東横線もこの方式を踏襲した。

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