ジャニーズ問題、国連が突き付けた4つの重大懸念 「静観する」では済まなくなった取引企業はどう動く

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これからのことを考え合わせると、「事態が鎮静化するのを静観する」というリスク回避的な行動を取るほうが、企業にとってのリスクはむしろ高まってしまうように思える。

ジャニーズ事務所との取引企業はどう動くべきか

ジャニーズ事務所側もこの事態を放置しているわけではなく、記者会見のあった8月4日に、8月末に特別チームが提言を行うこと、さらにそれを受けてできるだけ早く記者会見を行うという趣旨の表明を行っている。

故ジャニー喜多川による性加害問題に関する件について

特別チーム、あるいは事務所側がどの程度までジャニー氏の性加害行為を認めるかは未知数だ。

しかしながら、国連作業部会のヒアリングは「ジャニーズ事務所の代表」にも行われたとされており、それを踏まえて被害が数百名に及ぶと表明されていることを考えると、事務所側は性加害が行われたこと自体は認めることになるだろう。

また筆者には、特別チームの提言、および記者会見の日程は、ジャニーズタレントが出演する「24時間テレビ」(8月26、27日放送予定)以降に設定しようとしているようにも思えてならない。

もちろん、発表の準備に時間がかかることもあるだろうが、「24時間テレビ」の前に公表することがリスクとなるような情報が含まれている可能性も感じられる。

それでは、今後ジャニーズ事務所との取引企業はどう動くべきなのだろうか?

まず、メディア企業は忖度なく報道を行い続ける必要があるだろう。記者会見の内容など、事実関係を伝えるだけでなく、独自に取材を行ってしっかり視聴者、読者に情報を送り届けることが求められる。

たとえ、それがジャニーズタレントを日ごろから多く起用するメディアなどには短期的な不利益をもたらすとしても、「メディア企業」としての長期的な信頼性を獲得することの重要性を考えれば、メディアがどちらの対応をすべきかは明らかだ。

CM等にジャニーズタレントを起用しているスポンサー企業については、すぐに契約を破棄する必要はなく、8月末の特別チームの報告、それに続く事務所の記者会見を待つという判断で良いだろう。

ただし、現状の特別チームの対応が十分ではないという現状を踏まえると、それを待たずに、事務所側に誠実な対応を求める、東洋経済の記事(問3)にあるような「問い合わせや確認を行う」といった対応を行うことは重要となってくる。

特別チームの提言、ジャニーズ事務所の記者会見次第では、タレントの継続や新規起用を行わないという判断もあるだろうし、場合によっては契約中のタレントの途中解約という可能性もあるかもしれない。

ただし、最も好ましい幕引きは、ジャニーズ事務所が真摯な対応を行い、十分な経営責任を取ることで、被害者、所属タレント、ファン、関係企業への影響を最小限に留めることであるのは言うまでもない。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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