自民税調会長が語る「相続・税金の今後の方向性」 「労働慣行変わる中、退職金控除見直しが必要」

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──今年の「骨太の方針」で、退職所得控除の見直しを盛り込みました。狙いは何でしょうか。

税調では以前から問題意識を持っているテーマだ。「1つの会社に定年まで勤め上げる」という労働慣行が変化してきている中で、勤続20年を境目に、それを超えれば1年当たりの控除額が増える今の制度を、どう現状に合わせていくか。早めに転職した人が不利で、ずっと会社に残った人が有利でいいのかどうか、議論しなければならない。もちろん1つの会社に勤め続けることは悪いことではない。バランスを考えながら新しい制度を組み立てなければならない。

問題は、退職金課税には私的年金課税の問題が絡んでいることだ。会社を辞めるときに、私的年金の分も退職金としてもらう人のほうが圧倒的に多い。退職金の一部を年金的に毎年もらえば年金控除になるのに、退職所得控除のみで年金所得控除を活用していない。

年金については2024年が財政検証の年になる。さまざまな年金制度改正を決めていかなければならないと思うので、本来であれば、退職金と年金を一緒に議論したほうがいいだろう。

一本化は「将来的にあるかもしれない」

──相続税と贈与税のさらなる見直しはあるのでしょうか? また両税を一本化する可能性はありますか。

生前贈与の加算期間は、制度を走らせてそれなりに時間が経ってから議論することはありえるが、先の話だ。そのときに税率を見直すという可能性はある。一本化に関しては「将来的にあるかもしれない」くらいしか言えない。

相続税を払っているのは、国民の約9%にすぎず、今回の制度変更で税負担が増えるのは富裕層に限られる。株式や不動産などの譲渡所得が中心で、年間所得10億円を超える納税者に2025年から追加課税措置「ミニマムタックス」が適用される。一部では、スタートアップのインセンティブを阻害してしまうのではないかという声も聞くが、この制度の対象は200人ほどの超富裕層に限られ、国民全体の「貯蓄から投資へ」という流れを阻害することはない。むしろ2024年からのNISA(少額投資非課税制度)拡充などで投資への流れを後押ししていく。

決定した新ルールや変更ルールを走らせ、それで問題点が見えてきたら議論をしていくことが大事。2〜3年という短期間でなく、その先を見据えて税制というものを考えていかなくてはいけない。

(聞き手 加藤光彦、宇都宮 徹)

加藤 光彦 ライター

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かとう みつひこ / Mitsuhiko Kato

慶應義塾大学卒業後、女性誌を経て、東洋経済新報社に入社。編集局でゲームや電力業界を担当、その後ビジネスプロモーション局へ異動。現在は会社四季報執筆等に従事。

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宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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