被災した数千隻以上の漁船、「国内の生産能力ではとても足りない」との声も
東日本震災で大きな被害を受けた三陸沖の漁業。政府が漁港などのインフラ整備の復興プランを検討する中、損傷して使えなくなった漁船を新しい漁船に置き換えることも大きな課題になる。
地震で被災した漁船の数は漁船保険に加入しているだけで数千隻以上と推測される。一方、漁業関係者からは、「国内の漁船の生産能力ではとても置き換えることはできない」と危惧する声が出ている。
そのワケは、過去の不況で国内の漁船生産能力が縮小していることに加え、宮城・気仙沼など被災地にある多くの漁船製造業者も大きな被害を受けて操業が止まっているからだ。
さらに漁船独特の性格もある。漁船は貨物船、タンカーなどの商船と異なり、漁業者ごとに仕様が細かく異なるカスタムメイドの傾向が強い。漁業者の事業属性(マグロ漁、イカ漁、巻き網漁か、など)がそれぞれ異なるうえ、漁業法、いけす、ソナーなど装備も微妙に異なるので、大量生産しにくいという。
造船能力を持つ韓国や中国で日本の漁船を建造してもらう解決策も考えられるが、漁業関係者からは、「それも難しいのではないか」という声が出る。漁船建造業者ごとに、独自の設計図、木型、金型や製造ノウハウも持っている。「こうしたノウハウを簡単に海外に渡すとは思えない」(漁業関係者)からだ。