週刊東洋経済 最新号を読む(5/16号)
東洋経済オンラインとは
キャリア・教育 #姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉

心が強い人は「過去を捨てる」を習慣にしている ただ目の前のことに集中することの大切さ

11分で読める
2/6 PAGES

だが、ラグビーはそうではない。前半40分+後半40分=計80分という試合時間が決まっていて、時間内に相手を上回らなければならない。

一方的に押し込まれる試合展開になってしまった場合には、「時間的に絶対に追いつけない点差」「100%負けるとわかっている」中でも、プレーをし続けることになるし、し続けなければならない。

負けるとわかっている試合で何を思うか

「もう、負けるとわかっているのに、そういう時、何を考えてプレーしているんですか?」

そんな直球の質問をされたこともある。結論から言うと、僕は「何も」考えていない。少なくとも、スコアのことは一切考えない。

トゥイッケナム(イングランド)でのイングランド代表戦も、残り時間10分で32点差だった。イングランド代表相手に、わずか10分の間に5トライ獲って5本のコンバージョンキックを決めるのは、現実的に不可能。勝利は絶望的だ。こうした状況は日本代表戦だけでなく、キャプテンを務めているトヨタの試合でも、これまでも数えきれないほどあった。

そんな時、僕はチーム全員を集めて必ずこう伝える。

「スコアボードを見るな」

なぜか。過去は、変えられないからだ。

もちろんキャプテンとして出場している以上は、スコアボードは見ているし頭に入れている。残り時間や点差を常に計算し考えてはいるけれど、それはあくまでも僕個人のキャプテンとしての仕事。選手としての仕事は別だ。

メンバー1人1人が、自分に与えられた役割を80分間まっとうすること。それが選手として課されている唯一の仕事だ。

たしかにスコアは重要だが、それはそこまでの結果。もう過去のことだ。恨めしくスコアボードを眺めていても点差は縮まらないし、タックルミスで失った5点が帳消しになるわけでもない。どんなに頑張っても過ぎ去った時間は取り戻せないし、ここまでの結果はもう変えることはできない。

どうあがいても、過去には自分の影響を及ぼせないのだ。スコアボードは、その過去が書いてあるだけのものだ。

唯一、そこから僕たちの力で影響を与えられることがあるとすれば、それは目の前で起きていることだけ――向かってくる相手とのコリジョン(ぶつかり合い)であり、相手のボールを奪うことであり、1センチでも前に進むこと、それしかない。

次ページが続きます

3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES
6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象