利益率が低下してもテスラが脅威である理由 既存大手は太刀打ちできず、中国BYDが猛追

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テスラを猛追するBYDの勢い

その筆頭といえるのが中国のBYDだ。バッテリーメーカーとして深圳で創業したのは1995年のこと。携帯電話向け電池事業で経営基盤を固めると、2003年には中国の国営自動車を買収し自動車事業を開始した。近年はEVとPHV(プラグインハイブリッド車)を強化しており、自社製の「ブレードバッテリー」というリチウムイオン電池を搭載したEVとPHVの販売が急伸している。今年1月には日本でもEVの販売を開始した。

1995年に創業した中国のBYDはテスラ追撃の一番手。今年1月には日本でもEVの販売を開始した(記者撮影)

BYDのEV販売台数は2022年が91.1万台、2023年第2四半期は前年同期比95.3%増の35.2万台と伸び率ではテスラを凌駕する。第2四半期にはPHVも34.8万台(同101%増)販売しており、中国のZEV(ゼロエミッションビークル=EVと、一定以上を電池のみで走行可能なPHV)市場でトップを走る。

2023年第1四半期(1~3月)の売上高(電池事業なども含む)は1201億7360万元と前年同期比79.8%増と、同じ期間に24.4%増だったテスラを増収率で凌駕する。純利益は41.3億元(前年同期比約5倍)で、純利益率も3.4%。EVやPHVを大量に販売しながら、黒字を維持しているのはテスラと同じだ。BYDの時価総額は約14.8兆円。自動車業界ではテスラ(約119兆円)、トヨタ(約38兆円)に次ぐ3位。VW(約11兆円)を上回っている。

テスラ、BYDともにEV事業は損益分岐点を超えた世界で戦っている。まともにEVをラインナップできていない日本勢が巻き返すことはできるだろうか。

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井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

商用車・部品メーカーを担当。大学時代は写真部に所属し、社会学を中心に学ぶ。趣味は、漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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