自動販売機の節電へ東京都が条例案、悪玉論に戸惑う業界
4選を果たした石原慎太郎東京都知事の「自動販売機なんてやめちまえ」発言が口火となって、電力不足での“自販機悪玉論”が広がっている。14日には、都議会民主党も清涼飲料水の自販機の節電を努力義務とする条例案をまとめ、6月都議会に提出する方針だ。
条例案によると、電力ピークとなる7~9月の午前10時~午後9時に自販機の冷却機能を停止。東京電力管内の自販機87万台を対象に、ピーク時の電力使用量約26万キロワットを節電できるという。
条例推進者の伊藤ゆう議員は、「コンビニ前に設置されている自販機は無駄だ」と指摘する。これとは別に、石原都知事は東京だけでなく関東4県の知事にも働きかけ首都圏共通ルールを模索しており、自販機への逆風はとどまらない。
一方、飲料業界にとっては死活問題となりかねない。自販機は全国に約250万台設置され、2009年の売上高は1兆9800億円と巨大市場(飲料総研調べ)。すでに飽和状態にあるとはいえ、大手飲料メーカーは売上高の平均3割を自販機に頼り、利益率は5割に迫る「ドル箱」だ。
定価販売ができる強みに加え、自販機を設置する土地所有者に支払うマージンが2割で、コンビニ販売の半分で済むなど、負担が小さいからだ。業界関係者は「自販機は1台当たり1日平均15~20本売れれば利益が確保できるし、品ぞろえの主導権もこちらで握れる」と話す。
こうした中、条例案を撤回させたい全国清涼飲料工業会は15日に自主的な節電案を急きょ発表するなど、対応に躍起だ。