元ニートの彼が「33歳で東大」逆転合格の納得秘策 「勉強以前」のモチベーションの持ち方が大切

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「その生徒が入塾したときには、塾の内部でも大騒ぎになりました。『どうしよう、東大志望だ! 俺なんて大学すら行っていないのに!』って。でも、日本でいちばんを争うほど平均所得が低い地域で、高額な授業料をずっと払ってもらう以上、こちらも本気で向き合わなければなりません。だから、とにかくみんなで、自分自身も勉強しながら、必死になって指導をしました。自分もそのときになって東大の問題を初めて見て、『ああ、こんなに難しいんだ!?』と愕然としたのを覚えています」

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そんなに必死になって指導をしたものの、教えていた生徒さんは、惜しくも東大に不合格になってしまったと言います。親御さんからは感謝されたそうですが、青戸さんの心に暗い影を落とす出来事になりました。

「やっぱりショックでした。自分がもっとうまく指導できれば、もっと違った結果になったんじゃないか、と。そして、自分は塾の先生という仕事が本当に好きで、ずっとこの仕事をしていくことを決めていたのですが、しかし『大学受験を体感していない自分が教えてもいいのか?』と悩むようになったんです」

この出来事をきっかけに、青戸さんは東大を受験することを決意します。自分のためではなく、これから持つかもしれない生徒のための受験だったわけですね。

モチベーションを「他人のため」に置く

僕たちはよく、ドラゴン桜のように受験する人を取材しますが、その中でも意外と「自分のため」ではなく「他人のため」がスタートだったという人は多いです。

「自分の住んでいる地域のこれからのために東大に行きたい」

「家族の生活を支えるために東大に行きたい」

そんなふうに、別の人のためというモチベーションで受験する人は、自分が起点でないからこそ、モチベーションが維持しやすいという特徴があります。「もうやめよう」と考えても、自分のために始めていないから、「それでも、自分はがんばらなきゃいけないんだ」と続けようと思えるわけですね。

さて、30歳になって初めて東大受験をする決断をした青戸さん。得意の英語以外はほぼ初学者に近かった状態で、最初はやる気が持続しないところもあったそうなのです。それでも「自分の人生、ここで本気を出さなければいつ出すんだ」と奮い立たせて勉強を続けました。

とはいえ、生活もあるので、受験すると言ってもそこまで長い時間を勉強に捧げられるわけではありません。午前中は勉強、午後は生徒に教える、という生活をするようになったのだそうです。勉強時間はせいぜい1日3時間。でもこの生活を続けていたからこそ、勉強の効率が上がった部分があったのだと言います。

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