インフルエンサーが「あえて炎上」する納得の理由 無料情報の背景にアルゴリズムや経済的合理性

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良質な情報を入手するにはお金がかかる。そんな流れが生まれる構造的な要因はどこにあるのだろうか。そのひとつは、情報流通を担うプラットフォームのアルゴリズムの変化だ。

「フォロー」「フォロワー」の概念に依存しないアルゴリズム

個人が何かを発信する時の手段は様々だ。ブログを書く、Webメディアに執筆する、どこかの媒体のインタビューに答える、YouTubeに動画をUPする──様々な手段があるが、それらはX(Twitter)やYouTube、TikTokなどのプラットフォームを通じて拡散され、多くのユーザーに届けられる。その多くのユーザーに対してコンテンツを届けるしくみが「アルゴリズム」である。

主なプラットフォームはどこも、全員に同じ情報を見せるのではなく、ユーザー個々人の好みや関心に応じて、一人ひとりに違うコンテンツを届けることで、その接触時間の最大化を図っている。

かつては、その個々人の関心への最適化の方法が現状とはやや異なっていた。ユーザーが自ら、好きな発信者やインフルエンサーを「フォロー」する形で、好みの情報を得るしくみが主流だったのだ。「フォローする」とか「フォロワー」といった言葉が最もおなじみなのはX(Twitter)だが、Xも以前はタイムラインと呼ばれる主なフィード(記事一覧画面)に流れる情報は、あくまでフォローしているユーザーの投稿や、リツイート(拡散された投稿)だけだった。Facebookも、以前は友人の投稿のみがフィードに流れていた。

だが、人間は自らの興味・関心事をもれなく言語化して、フォローすることはできない。例えば「自衛隊やアメリカ軍の装備に興味があるから、軍事専門家のこの人の発信をチェックしよう」といった具合に、自分の関心事を細大漏らさず言語化して、その人のアカウントをフォローし、自分の関心事が十分反映されたフィードを作るのは難しい。そもそも、細かな興味・関心事は日々移り変わるものでもある。その都度、フォロー先を細かく入れ替えるわけにもいかない。

そこで、TikTokやYouTubeは「フォロー」「フォロワー」の概念に依存しないアルゴリズムを作り、ユーザーが言語化しきれない好みや関心事をもとに、新しいコンテンツをユーザーに提示することに成功した。

TikTokのアプリを起動すると「おすすめ」というフィードに多くの動画が流れてくる。これらは、ユーザーが誰もフォローしていなくてもなんとなく見ているだけでどんどん自分の関心事に近づいてくる。その背景には、ユーザーが動画をどの程度の時間視聴したか、あるいは動画が投稿後一定時間内にどの程度視聴されたかといったデータをもとに、個々のユーザーの好みや関心を類推するだけでなく、多くの人に支持される動画コンテンツを素早く割り出すアルゴリズムがあるのだ。

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