漫画喫茶が賭場に!?借り手優位で相次ぐ賃貸問題 テナント争奪戦で「賃貸保証サービス」需要急増

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都内オフィス仲介会社のベテラン社員は、「中小ビルのオーナーは空室を埋めるのにかなり苦労しているようだ。中小企業のオフィス拡張意欲は高く、フロアを細かく分割して募集をかけた大型ビルが、そうしたテナントを中小ビルから奪い始めている」と指摘する。

テナント争奪戦が激化する中、ビルオーナーや管理会社としても可能な限りテナント候補は入居させて空室を埋めたい。「民間調査会社の調査結果などで機械的に審査していると、実際には賃料負担力のある小規模テナントまで逃しかねない」と、平和不動産プロパティマネジメントの山本部長は話す。

SFビルサポートの増山暁泰次長は、「ビルの稼働率を引き上げるため、テナントとの契約条件を緩和するオーナーは増えているが、それに伴い賃料滞納や訴訟トラブルが発生している。賃料滞納の相談が他社物件から多く寄せられており、非常に強いニーズを感じている」と語る。実際、同社の2023年3月期の滞納賃料保証契約は3562件(前期比9.2%増)と右肩上がりで増えている。

敷金を減額するサービスの需要も強い

オフィスの賃貸保証サービスでメリットがあるのはビルオーナーだけではない。賃貸保証サービスなどを展開する日商保が提供するのが「敷金半額くん」だ。同社が賃貸保証をすることで、テナント側は入居時に預け入れる敷金を半額以下に削減できる。

オフィスビルの敷金は通常、約6~12カ月分の賃料に匹敵するため、スタートアップなど財務基盤の弱い企業にとってはかなり重いコストとなる。日商保の橋本猛営業部統括部長は、「事前審査をしっかりすることでリスクを抑えている。審査通過後も、決算資料を取得しテナントの事業継続性を定期的に確認している」という。

敷金を減額できる保証サービスは中小テナントにとってメリットが大きい。「サービスを導入したことで成約率や稼働率を引き上げられた。テナントをより集めやすくなった」と、J-REIT「日本リート投資法人」の資産運用会社であるSBIリートアドバイザーズの担当者は話す。

すでに東急不動産や東京建物など大手デベロッパーの一部物件でも敷金減額サービスの導入が進んでいる。日商保の橋本統括部長は、「ビルを保有するファンドやデベロッパーなど月に10~15社と協議している。新規契約件数もおよそ倍増しており需要は強い」と胸を張る。

オフィスビルの稼働率が落ちて賃貸保証サービスの需要が高まる一方で、あるオフィス仲介の関係者は「審査基準が緩く、申請すればほぼ通過できるような賃貸保証サービスも中にはある」とささやく。テナントの奪い合いに悩むビルオーナーもサービスを選ぶ際には注意が必要だ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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