たとえば、アメリカ政府は家族4人で世帯年収が3万1000ドル(約430万円)を下回る家庭を超低所得層としています。また、低所得者向け住宅入居資格があるのは、家族4人で世帯年収が3万6000ドルから5万2150ドル(約497万円から約720万円)の家庭です。
厚労省が2021年に発表した「国民生活基礎調査の概況」によると、日本の世帯平均年収は564.3万円なので、日本の平均的な家庭がアメリカでは「低所得層」とみなされてしまうわけです。
ただ、アメリカは州によって収入格差が大きいため、経済的に豊かな地域では定義ががらっと変わります。
アメリカの住宅都市開発省によれば、2018年におけるサンフランシスコの低所得者の定義は家族4人で世帯年収が11万7400ドル(1620万円)を下回る家庭です。なんと年収1000万円を超えていても「低所得」なのです。
このような驚くべき定義が行える理由は、サンフランシスコのような大都市は物価が高騰しているからです。たとえば、家族4人が住むのに最低限2LDKぐらいは欲しいという人が多いと思いますが、この間取りのマンションの賃料は月に3000ドル(41万円)を超えます。
日本のロイヤルは質素倹約?
日本最大手の物件情報サイト「SUUMO」の調査によると、東京都港区における2LDKの物件の平均賃料は37万円ですから、ロサンゼルスよりも10%近く安くなっています。
実際、アメリカ人は年収1000万円以上でも不安を抱えているという調査結果があります。個人資産会社の「Personal Capital」と市場調査会社の「Harris Poll」が2021年に2000人以上のアメリカ人を対象に行った調査によると、「アメリカ人が家計は健全だと感じるには平均12万2000ドル(約1684万円)の年収が必要」だという結果が出ました。もはやアメリカでは年収1000万円では安心ができないのです。
日本では以前、小室圭さんと眞子さんが住むニューヨークのマンションの家賃が60万円を超えていると報じられ、高すぎると話題になりました。
実は、現在のアメリカの大都市では月60万円はそれほど高級な水準ではありません。むしろ、私の住むイギリスでは、プリンセスがそのような住宅に住むということで「なんて質素倹約をしているロイヤルなんだ」と大変驚かれていました。
また、私の夫は日本に滞在時に、街で配っていた不動産のチラシを見て、怪訝な顔をしていました。何が不思議なのか尋ねてみると、次のような答えが返ってきました。
ここには、不動産購入者のモデルケースとして、夫の年収が750万円、妻は専業主婦、子どもは2人という家族構成が書かれている。子どもが2人いるのに、年収が750万円しかないと、生活はとても苦しいはずだ。これは生活困難な層の実例として挙げられているのか」
つまり、イギリス人の夫にとっては、世帯年収750万円で子どもが2人いる夫婦は貧困層という感覚なのです。広告のチラシ1つとっても、日本と海外では、もはや常識が異なってしまっていることがわかる例だと思います。
このように、日本以外の先進国は物価も給料も上昇し続けています。日本にいるだけではあまり気づかないかもしれませんが、物価も給料も30年以上低迷し続けている日本の現状は、他国から見ると、異常に映るのです。
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