韓国企業は「円安の長期化」で大打撃を受ける とくに中小の輸出企業への影響は深刻

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業種別に見ると、海外輸出市場で日本と競争を繰り広げている自動車、一般機械、IT分野などで円安による打撃を予想している。

そうした中、為替の変動に対して一程度の対策を行っている大企業より、中小の輸出企業の競争力低下が心配されている。化粧品業界も円安で悩みが深まっている。韓国企業の日本への輸出が減り続けている状況で、価格での競争力さえ弱まるためだ。日本の化粧品市場の規模は世界第2位。大韓化粧品産業研究院によれば、化粧品の輸出全体で日本向けが占める割合は、2013年の12.3%から昨年は7.7%にまで減少した。

観光業も注意深く状況を見つめている。一般的な傾向として、ウォン高によって韓国を訪れる日本人観光客が減ると、代わりに日本を訪れる韓国人観光客が増加する。ただし百貨店と免税店では、日本人観光客が減ったとしても中国人観光客がその分を穴埋めできるため、それほど心配する声は多くない。内需市場を基盤とする食品・流通業界も、今回の円安ウォン高に対してそれほど動揺はしていない雰囲気だ。

つまり、円安によって厳しい状況になることが見込まれるのは、輸出産業なのである。

政府による積極介入は難しい

韓国経済は輸出依存度が高い。したがって、外為当局がウォン・円レートを是正するため介入する可能性もある。しかし、ウォン・円レートを是正するには、ウォン・ドルレートに調整を加えなければならないため、そこが厄介だ。米国が金利引き上げというカードをちらつかせて自国の行きすぎた経常収支赤字是正のためにウォン安に警告を与えている状況下で、ウォン・ドルレートの調整は難しい。よってウォン・円レートの是正も簡単ではないだろう。

前出のLG経済研究院のイ・チャンソン研究委員は「ウォン・ドルレートへの介入には限界がある。円・ドルレートの動きが今後の主な変数になるだろう」と見ている。下半期に予想されている米国の金利引き下げが、市場の予想より遅れると、ウォン・円レートはさらにウォン高に振れる可能性がある。

ギリシャのデフォルトへの不安が高まり、安全資産であるドルの受容が突然高まる可能性もある。日本の経済状況も変数だ。アベノミクスで日本経済が良くなれば円安には歯止めが掛かる可能性がある。しかし、停滞したままであれば、日本政府は量的緩和の拡大へと向かう。そうなると円安ウォン高はさらに進むだろう。

(韓国『中央日報エコノミスト』2015年5月4日号より、『中央日報エコノミスト』は『週刊東洋経済』と提携関係にある韓国有数の経済誌です)
 

ハム・スンミン 韓国『中央日報エコノミスト』記者
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