実は勉強が嫌い「福沢諭吉」なるほどな英語習得術 漢文学習で身につけた「素読」を英語でも応用

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中でも諭吉にとってのイチオシは『春秋左氏伝』。左丘明 によって書かれた、春秋時代の政治や外交などにまつわる説話集です。その漢書は全部で15巻ありましたが、たいていの生徒が3、4巻ほどでギブアップしたのに対し、諭吉はすべて一通り読んだそうです。それどころか、11回読み返しては、面白いと思った部分を暗記したのだとか。 こうして、諭吉は夢中になれるものに出会えたことがきっかけで、本嫌いを克服し、中国語のスキルを見る見るうちに上達させていきました。

これは英語学習においても同じです。いろいろな教材を試すことも大事ですが、諭吉のように、一つの教材を徹底的にやり込むことで、本に出てくる語彙や表現をモノにすることができるのです。

師匠に負けてたまるか!

諭吉の脳裏には常に「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の言葉がありました。勉学に励めば、人間の身分の違いを埋められるということを信じていた諭吉は、漢学塾でも先生に負けまいと必死に勉強していました。

当時、藩校などでは漢文を学ぶのに「素読」という方法がとられていました。「素読」とは、意味の解釈を加えず、ただ声に出して暗唱する学習法。これを逆手にとって、「意味を理解すればどんなに偉い先生にも勝てるだろう」と考えた諭吉が、独自に編み出したのが「意味を理解しながら読む」という方法でした。

結果的に諭吉のその策略は思いどおりに運んだようで、午前に素読を教わった先生と、午後に漢文の読みで対決をしては、そのたびに先生を負かしていたのだとか。 

語学においては、自然に湧き出る心理的な欲求に基づき行動することが重要で、それによってモチベーションが持続し、成功率が高くなるといわれています。諭吉の場合、負けず嫌いな性格が語学を続ける動機となり、結果として師匠を上回るほどの語学力の獲得につながったのです。

諭吉はのちにオランダ語や英語を学ぶ際にも全く同じ学習法を適用しました。もちろん、原書でつまずくこともありました。そんなとき、とりあえず30分間は辛抱強く無言で考えるようにすると、意味が自ずと見えてきたのだとか。こうして、諭吉はオランダ語と英語を上達させていきました。

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