東急田園都市線、「地下駅」で密かに進む大改装 ホームの「暑さ」解消しイメージ一新なるか
リニューアルプロジェクトの発端となったのは、2017年にこの地下区間で相次いだトラブルだ。同年6月にトンネル内で水が噴出したのをはじめ、直後の7月には信号関係のケーブルから発煙、10月と11月には停電が発生し、列車の運行に大きな支障が出た。主な原因は施設の老朽化で、東急電鉄はこれらの問題を受けて「緊急安全総点検」を実施。設備の検査体制などを見直し、列車運行の機能面では安定を取り戻した。
今回リニューアルするのは、駅のホームやコンコース、空調設備など利用客に直接関わる部分だ。「毎日お客様が利用する駅の工事には費用も時間もかかるが、さらなる抜本的な解決に向けて覚悟を決めてやろうという考え」と山口氏はいう。
プロジェクト名「グリーンアンダーグラウンド」のグリーンは、サステナブル、快適、クリーンなどのイメージから名付けた。田園都市線の路線カラーは緑色だが、山口氏によると「それはたまたまの一致」だという。「グリーンというと『緑化するんですか』と誤解されることもあるが、そうではなく語感的にいいね、と」(笑)。混雑やトラブルなどのネガティブなイメージをポジティブに変えたいという意識も強く込めている。
第1弾は駒沢大学駅
5駅のうち、第1弾として2021年に着手したのはちょうど真ん中にあたる駒沢大学駅だ。最初に同駅を選んだ理由について、東急プロパティマネジメント・プロパティマネジメント事業本部PM二部の秋元隆治担当部長は、東急が重点地域として掲げる渋谷・自由が丘・二子玉川を結ぶ三角形「プラチナトライアングル」の中心に位置すること、駅近くの駒沢オリンピック公園が地域資源となっていることなどを挙げる。また、「自社の資産が地上にもあり、工事がしやすい」(山口氏)点も理由だ。
リニューアルするのはホームやコンコース、トイレなど駅の各部分で、工事は2021年7月に開始。ホームなどの天井板は外されてネットで覆われ、まさに「工事中」の様相だ。
暑さが課題となっているホームは、空調設備の改修が主なポイントだ。装置の容量をアップするとともに、これまで天井などにあった吹き出し口を壁面のできるだけ低い位置に設置。ベンチと一体化した形として壁に埋め込み、圧迫感のないデザインにする。また、トンネル上部にたまった列車の排熱がホームに吹き込みにくいよう、ホームとトンネルの境にあたる部分の天井に壁を設ける。列車の進入時などに起きる強い風も「何か活用できないか検討している」(山口氏)という。
山口氏によると、今回のプロジェクトでとくに力を入れているのは、脱炭素など環境面への配慮だ。地下駅は設備が多いためどうしてもエネルギー消費量が多くなり、トンネルにつながっていることから空調の設計が難しいという。そこで、空調性能を確実に発揮できるよう、専門家らを交えて検証する「コミッショニング」という方式を同社として初めて採用。空調能力を強化する一方で、改修後の二酸化炭素排出量は現在より削減する。
廃棄物の削減もコンセプトの1つで、これまでシンボルとなってきた緑色の壁面タイルや床材などは最大限活用する方針だ。
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