東急田園都市線、「地下駅」で密かに進む大改装 ホームの「暑さ」解消しイメージ一新なるか

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コンコースも姿を大きく変える。地下空間を掘り拡げるといった工事は行わないが、既存の駅事務室の配置変えやこれまで使われていなかった業務用スペースを活用するなどで新たな空間を生み出し、「街の魅力を高めるためのスペースを確保する」(秋元氏)。計画はこれからだが、店舗などを入れることも検討するという。

すでに完成しているのは、2022年7月から使用を開始したトイレだ。内装の一部には同線開業前に地上を走っていた路面電車、玉川線の軌道の敷石として保管されていたという石材を一部に使っているのがユニークだ。

駒沢大学駅リニューアルのイメージ
リニューアル後の駒沢大学駅コンコースのイメージ(画像提供:東急電鉄)

プロジェクトは地上にも及ぶ。駅の東口地上にある東急電鉄所有のビルは木の葉をイメージした緑色の外観に。ビルに入居する「ドトールコーヒーショップ」とは計画時から連携し、駅リニューアルのコンセプトを反映して店内の階段には玉川線敷石として保管されていた石材、ベンチには池上線池上駅の古材を活用するなどした。西口には木造の4階建て駅ビルも建設中で、こちらも木の葉をイメージした外観デザインになる。

駒沢大学駅に次ぎ、2023年5月には第2弾として桜新町駅のリニューアルも始まった。山口氏によると、2番目に同駅を選んだのは、「急行の通過待ちがある駅のためお客様がホームにいる時間が長く、暑いという問題を何とか早く解決したい」のが理由だ。同駅も、利用者に親しまれている桜色の壁面タイルや床材は極力そのまま活用し、デザインに溶け込むような形で空調設備を増設。「アーチ型に空調機を配置してその下にたたずめる空間をつくり、桜並木が連続するようなイメージで計画している」(山口氏)という。

ハード面での「混雑緩和」策はなし

5駅中2駅で進み始めたリニューアルプロジェクト。駒沢大学駅は2024年夏、桜新町駅は2026年夏の竣工を予定している。ただ、ほか3駅の予定はまだ決まっていない。「できるだけ速やかに着手したいが、各駅は道路下にあるため工事ヤードの設置や資材搬入などさまざまな条件をクリアする必要がある」(山口氏)といい、第3弾がどの駅になるかは未定だ。

また、今回のプロジェクトでは、ホームの拡張などハード面での「混雑緩和」策は盛り込まれていない。かつては全国有数の混雑路線だった田園都市線だが、コロナ禍を経て現在はある程度落ち着いている。混雑対策としては、「駅周辺にワークスペースを設けたり、混雑している号車を駅で表示できるようにしたりといったソフト的な対策を検討していきたい」(山口氏)という。東急電鉄は大手私鉄の中でも通勤定期利用者の減少率が大きく、「コロナ後」を見据えたリニューアルプロジェクトといえるだろう。

山口さん・秋元さん
「グリーンアンダーグラウンド」プロジェクトに携わる東急電鉄工務部の山口洋賢氏(左)と東急プロパティマネジメントの秋元隆治氏(記者撮影)

開業以来約40年を経て動き出した、田園都市線地下区間の本格的な駅リニューアル。利用者に親しまれてきた5駅の「カラー」を生かしつつ、混み合う、暑い、そしてやや地味……といったイメージを刷新できるか、これからが本番だ。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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