風邪薬は「2つ目」に出る症状で選びなさい! 薬剤師が教える、意外と怖い「薬」の話

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マイコプラズマの治療は抗生物質です。マイコプラズマという細菌は多くの細菌と違って細胞壁という構造を持っていないのが特徴です。細胞壁というのは植物の細胞を想像するとわかりやすいのですが、細胞膜の外側に固い壁をもう1枚はりめぐらしたものです。バリアの役割があります。動物にはない構造なので、ここを壊す薬を使えば細胞は破壊されます。ペニシリン系やセフェム系の抗生物質はこの細胞壁をめがけて攻撃します。

しかし、マイコプラズマは細胞壁がないのでこの抗生物質が使えないのです。そこで、クラリスロマイシンに代表されるマクロライド系抗生物質を使うことが推奨されています。

抗生物質はきっちり飲もう

マクロライド系抗生物質が攻撃する場所は細菌のたんぱく質です。マクロライド系抗生物質は耐性菌の問題があります。東京都感染症情報センターの報告によると、2011年4月から2012年4月の間にセンターに搬送されたマイコプラズマ患者のうち82%がマクロライド系抗生物質の耐性菌であったという報告があります(「都内における肺炎マイコプラズマのマクロライド耐性化状況 2011~2012年」)。

耐性菌を作らないために抗生物質は出された日数を飲んで、完全に細菌を殺しておくことが必要なのです。

マイコプラズマ感染症以外でも同じことが言えます。抗生物質は、出された日数を使ったら細菌がいなくなることを想定して出しています。ぼうこう炎なども、抗生物質を飲むと見事に症状がなくなるのですが、実際はまだ原因となる細菌は全滅していません。症状がなくなると治ったと思ってしまいますが、ここで薬をやめて生き残りを作ってしまったら、この薬に対して耐性を獲得してしまうのです。

抗生物質ではないですが、インフルエンザのタミフルだって、途中でやめたら症状がぶり返すこともあります。しかも、菌が体中にいるまま、「治った」と思って外を歩いているわけですから、インフルエンザウイルスをまき散らしているのと同じです。

病院でもらった薬は、「治ったらやめていいです」と言われないかぎり、指示されたとおりに飲んだほうがよいと思います。
 

小谷 寿美子 薬剤師

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こたに すみこ

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。

明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。
市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

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