IoT家電規格「黒船襲来」に日本勢はどっちつかず スマートホームでも日本は「ガラパゴス化」?
日本のIoT家電は、家電メーカー各社の独自規格で各社が持つクラウドにつながっている。だが多くの家庭は、冷蔵庫や洗濯機、エアコンとそれぞれ異なるメーカーの製品を使っているだろう。そうすると、IoT家電を操作するためのアプリもメーカーごとにダウンロードする必要がある。
「各社とも顧客を囲い込みたいという気持ちと、それでは(IoT機能の利用が)広がらないという思いが交錯している」。三菱電機のDXイノベーションセンターの朝日宣雄センター長はそう語る。
家電をネットにつなぐ仕組みには維持費用がかかる。この費用を賄うために広告事業に関心を持つ家電メーカー各社にとって、スマートスピーカーに自社顧客の情報を吸い上げられたくないというのが本音だ。
家電メーカーの規格同士では互換性がない一方で、実は日本の家電にもマターのようなスマートホームの「共通規格」がある。
2011年、家電などに搭載できる「エコーネットライト」という共通規格が誕生した。これは家庭内のHEMS(家庭で使うエネルギーの管理システム)機器に情報をまとめる、という発想で生まれた。2018年にはクラウドを介して家電の操作を行う、マターに近いタイプの規格も発表された。
2021年度末時点で、「エコーネットライト搭載」と認証を受けた機器の出荷台数は累計1.2億台を超える。しかし、ほぼすべてが電気のスマートメーターとエアコン。省エネ住宅として補助金をもらうために認証が必要だったのが理由で、ほかの家電には広がっていない。
独自規格とマターは補完関係になれる?
日本企業はマターとの折り合いがついておらず、まだ手探りだ。
三菱電機では、自社クラウドでエコーネットライトにも対応する準備を進めている。三菱電機ではないメーカーの製品で、エコーネットライトに対応する機器から発せられるいわば「エコーネットライト語」と「三菱電機語」を変換しあう機器を開発中だ。2024〜2025年の導入を目指す。
この変換器を使えば、三菱電機の家電も他社の家電も三菱電機のプラットフォーム上で操作できるようになる。朝日センター長は、「マター対応の機器がマジョリティになったら、『三菱電機語』や『エコーネットライト語』では話にならないので、『マター語』への準備もしている」と話す。
家電メーカーの独自規格はマターと共存していくとの見方もある。
たとえば、エアコンの電源のオンオフは、メーカーごとの差がないのでマターで対応できる。だがエアコンの故障時に、修理箇所や必要な部品を遠隔であらかじめ把握し、顧客の家に訪問する回数を減らす、といったメーカー独自の仕組みにはマターだと対応しにくい。
「マターとエコーネットライトは背反するものではなく、補完しあうものだ」(パナソニックの戦略本部CTROチームでIoTセキュリティやプライバシー技術を担当する山本雅哉エキスパート)。
日本の家電メーカーの存在感がまだ大きい日本の市場では、マターによって一気にシェアをひっくり返されることはないかもしれない。だがスマートホームの中心に位置するのは、マターの普及を推し進めるスマートスピーカーだ。
パナソニックの山本エキスパートは、「日本では高いシェアで製品を展開しているので、マターが日本市場に入ってこないなら変える必然性はなく、様子見をする」と話す。日本の家電メーカーは、様子見の姿勢を貫けるうちにマターに席巻されないよう準備する必要がありそうだ。
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