任天堂創業家、東洋建設株を巡る「1年戦争」に決着 取締役の過半を握ったYFOは「完勝」したのか

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東洋建設の本業である土木事業のたたき上げである大林氏と、建築畑での経験が豊富な平田氏、そして三菱商事で世界的な視野でビジネスを見てきた吉田氏のトロイカ体制となる。実は、吉田氏の代表取締役就任については、YFO側は事前に想定していなかった。「ポジティブサプライズだった。取締役会での話し合いの中で、吉田氏の代取就任が決まった」と、YFOの関係者は明かす。

ほかにもYFO側からはフジタの建設本部理事の経験がある登坂章氏が取締役として名を連ねる。さらに、元電源開発副社長の内山正人氏などが社外取締役として加わる。YFOと東洋建設の両陣営から「ハイブリッド」した形の、重厚な経営布陣になったと言える。

今後、東洋建設が洋上風力発電事業の本格化をはじめとした成長戦略を進めていくうえで、両陣営の知見が注入されるメリットは大きい。

「経営リスクを多角的に検証しながら、質の高い意思決定をする体制にしてもらいたい。前任の武澤恭司社長には権限が委譲されすぎていて、意思決定に問題があるように見えた。この先はガバナンスの健全化に努めてほしい」と、YFO関係者は言う。

「TOBの姿勢は変えていない」

気になるのは、YFOは東洋建設に対するTOB提案を引っ込めていないことだ。この先、TOBを実施し、東洋建設の未上場化を推し進めることはあるのか。

この点について、YFO関係者は「TOBの姿勢は変えておらず、今後も検討していただきたいと思っている。非公開化も実現したい。(洋上風力事業などの)新しい領域はすぐには利益を出せない。この先は腰が据えた改革が必要で、未上場化は重要だ」と話す。

一方、YFO関係者は次のように続ける。「いきなり『TOB受け入れに(経営の議論を)フォーカスしてください』と言ってしまえば、会社は回っていかない。優先順位でいうと、まずは会社として体制固めが先決だろう」。

YFOはこれまでも、強引にTOBをしかけるタイミングは何度もあった。それをしてこなかったのは、東洋建設の現経営陣の同意なしにTOBを進めることで、社内に混乱が生じ、かえって企業価値の向上を妨げることを懸念したからだ。今回の新経営陣のもと、東洋建設が新しい分野を開拓して企業価値を向上することができれば、未上場化に踏み切る意味は薄れていくかもしれない。

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