任天堂創業家、東洋建設株を巡る「1年戦争」に決着 取締役の過半を握ったYFOは「完勝」したのか

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「1年戦争」の主役の1人であるYFO代表の山内万丈氏は、いまどのような心境なのか。今回の株主総会の結果を聞いた万丈氏は、「今回の結果を気にせずに、ひたむきにしっかりと、東洋建設の企業価値向上に向き合っていくことが必要だ」と、周囲に語っているという。

株主総会の結果を受けてYFOが6月27日に公表したリリースには、このような一文がある。「これまでの経緯から、図らずも、東洋建設の従業員やそのご家族の方々をはじめ関係者の皆様に、多大なるご不安と混乱を与えてしまったものと認識しております」。この文章は、リリースの原案を見た万丈氏が、自らの手で加えたものだという。

任天堂創業家・山内万丈氏が書き足した言葉

万丈氏は普段、最高投資責任者の村上皓亮(ひろわか)氏に東洋建設に関するリリースの内容を一任している。だが、6月27日のリリースには一字一句に目を通し、気になる表現を手直しした。そして次の言葉が添えられた。「新たな取締役会の下で、ご不安と混乱が早期に解消され、関係者の皆様にとって良い会社となることを心より望んでおり、そうなることを固く信じております」(表現を一部編集)。

TOB提案をめぐって丁々発止を続けてきた両者だが、それはもう「ノーサイドだ」との意思表示であろう。YFOの関係者は語る。「(東洋建設の協議はしばらく途切れていたが)今後は対話をしていこうと思う。われわれから、対面を申し込むつもりだ」。

東洋建設は会社コメントとして、「株主提案の決議の結果について、厳粛に受け止める」としている。今後、東洋建設とYFOサイドのハイブリッド経営で、企業価値の向上を図ることができるのか。取締役会の中で再び対立が起きれば、混乱状態となるのは必然だ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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