防衛省「パワードスーツ」構想は濫費である 新たに開発する必要がない理由<上>

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本研究は技本がすでに実施してきた「隊員用パワーアシスト技術」の研究の成果を基礎に行われる。この研究ではイキシス・リサーチが主契約社となり、主として高い荷重に耐えられる重装研究用と、主として不正地での走行能力の獲得に主眼をおいた高機動研究用の2種類の要素研究のための試作が行われた。

隊員用パワーアシスト技術-重装備研究用(左)高起動研究用(右)(写真提供:技術研究本部)

技術研究本部がパワードスーツの開発の乗り出した背景には、普通科装備の重量増加に対応するためだ。欧米人に比べて体格が劣る日本人には特に必要となる装備であるのが開発理由だ、と技本の担当者は説明している。

近年の歩兵装備は20世紀に比べてかなり重量が増している。かつては平均的な歩兵装備の重量は24キログラム前後といわれていたが、先進国の軍隊では倍近く増加している。これはまず防御力の強化のために、ボディアーマーに腕部、頸部、下腹部、胴体側面まで防御範囲を増やし、さらに前後には小銃弾を止めるためのプレートまでを装備している。その他個人無線機、タクティカルライト、PAD、暗視装置、これらの予備電池など多くの装備を携行する必要がでてきた。

歩兵の装備は、とにかく重い

個々の兵士レベルだけではない。小隊レベルでも多彩な弾薬やUAVなどを運用するため関連装備の重量も増加している。2009年にアフガニスタンでの英軍海兵隊及び落下傘部隊歩兵部隊の将兵の個人装備の重量は平均36キログラムに増加している。さらにその後、小銃歩兵装備の重量は54キログラムまで増加している。機銃手はさらに重く、62キログラムとなっている。

その内、装置ボディアーマーなどの防御用装備の重量だけでも15.9キログラムもある。このような重量は歩兵にとって明らかに過重であり、各国とも火器や装備の軽量化に力を入れている。それはたとえば火器にチタニウムや炭素繊維を導入して重量軽減を図るものだ。昨年発表されたサーブ社の携行型無反動砲、カール・グスタフM4の開発はまさにこの需要に沿ったものである。M4はチタニウム合金や炭素繊維を多用して軽量化を測り、重量は約6.6キログラムと陸自が近年採用したM3よりも3.4キログラム軽い。

なお、陸自はなぜかこのM4の開発を知りながら、そのリリースを待たずに2012年にM3を採用したのか、理解に苦しむ。その点については、昨年11月に本連載で書いた「なぜ自衛隊は『暴発する機銃」を使うのか』をお読みいただきたい。

陸自が現用しているM2の重量は16.1キログラム。M4はこれよりも約10キログラム軽い計算だ。だが全体的に見れば、装備の軽量化はなかなか難しいのが現状だ。パワードスーツ開発の背景にはこのような事情が存在する。

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