シャープが堺・亀山の大型液晶工場を休止、真相は大震災でなく販売不振
実はシャープの液晶パネルは震災以前から在庫の過剰が指摘されていた。シャープが直近のアナリスト向け説明会で明らかにした昨年末の在庫は約2カ月弱。業界平均は3週間程度とされ、その水準は約2倍に及んでいた。
きっかけは、堺工場の共同運営先のソニーが追加出資を見送ったことだ。09年当初の契約では、ソニーは11年4月末までに持ち株比率を現在の7%から最大34%まで順次引き上げ、出資増に応じてソニーが同工場からのパネル調達量も引き上げる方針だった。しかし、この合意は立ち消えとなり、ソニーという安定した大口需要家を失った。
新たな外販先開拓も難航した。対韓国ウォンで円高となり、韓国サムスン電子などの液晶パネルメーカーと比べた価格競争力は落ちていった。誤算続きの中、10年7月から堺工場のフル稼働に踏み切ったが、案の定、つまずく結果となってしまった。
シャープ側は「工場休止は4月に入ってからだ」と、前述の見方を否定する。いずれにせよ、工場を止めた理由は震災というよりも、昨年からの液晶事業不振が下敷きとなって起こったのはほぼ間違いない。
ジレンマに悩む中国進出
こうした苦境は、検討中の中国・南京市での液晶パネル工場建設の決断を、さらに難しくさせている。当初、シャープ側は亀山第二工場級の第8世代工場の建設を表明したが、中国当局に認められず、代わりに堺工場と同じ最新鋭の第10世代工場の建設を求められている。要請をのむかどうか、最終決定には至っていないが、14年ごろの立ち上げをメドに「基本的には10世代でやる方向で進んでいる」(シャープ関係者)ようだ。
ただ、そうなれば、今ですら堺・亀山工場の供給過剰にあえぐ中、中国でも堺工場級の巨大工場を抱える重圧を背負うことになる。一方で進出を拒めば、家電エコポイント需要が消滅した国内市場と共倒れの道を歩む。進むか退くかのジレンマの中、シャープの液晶事業はかつてない岐路に立たされている。
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(西澤佑介 =週刊東洋経済2011年4月23日号)
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