シャープが堺・亀山の大型液晶工場を休止、真相は大震災でなく販売不振

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シャープが堺・亀山の大型液晶工場を休止、真相は大震災でなく販売不振

社運を懸けた液晶工場の灯が消えた--。シャープは4月上旬、テレビ用の大型液晶パネルを製造する堺工場(大阪府堺市)と亀山第二工場(三重県亀山市)の操業を、一時休止したことを明らかにした。2008年のリーマンショック直後でも稼働を続けており、全面停止したのは今回が初めて。極めて異例の事態といえる。

シャープの液晶事業は約1兆円に上り、全売上高の約3分の1を占める屋台骨。自社のテレビブランド「アクオス」だけでなく、外部のテレビメーカーにも供給しており、その旗艦工場が堺と亀山だ。

ゴールデンウイーク明けまでの休止だが、「11年4~6月期の営業利益は50億~100億円程度の赤字に陥らざるをえない」と、SMBC日興証券の三浦和晴アナリストは指摘する。液晶製造は巨額の設備投資負担で固定費が重い。少しの稼働減でも損益に与えるインパクトは大きい。

液晶の主力工場はなぜ止まったのか。シャープは東日本大震災を理由に挙げる。一つは複数の工業用ガスの調達が不安定になったこと。もう一つは3月の家電エコポイント駆け込み需要が不発となり、パネル在庫が平時より1カ月程度積み上がったことだ。

工場は“止まっていた”

が、電機業界に通じる複数の関係者は「3月11日以前から堺の液晶工場はほぼ止まっていた」と口をそろえ、シャープの見解に疑問を投げる。震災はあくまで“口実”で、操業停止はパネルの供給先獲得に苦戦した結果という。

事実、工業用ガスの調達難を理由に、大規模な操業停止に追い込まれた液晶メーカーはない。不足が懸念された半導体・液晶製造装置の洗浄用ガスの代表的サプライヤーである関東電化工業は、震災直後こそ群馬県渋川市の工場が操業停止したが、1週間後には生産を再開し始めている。工業用ガス国内最大手の大陽日酸でも、納期遅延が懸念される事態は起きていない。

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