ニュージーランド「住宅価格崩壊」が意味すること インフレ対策利上げで資産価値はここまで急落
マイケル・ウィルソンは3室の寝室がある自宅を売りに出した当初、すぐに売れると楽観視していた。初回の内見には、十数人の購入検討者が訪れた。
ところが、あれから約1年が経過した今も自宅は売れていない。購入希望者は次々と現れたが、その購入希望者の自宅が売れなかったために、売却が成立しない状態が続いている。
これが、住宅市場が世界でも指折りの混乱状態となっているニュージーランドの現状だ。過去1年半で住宅所有者や投資家は何十億ドルという富を失った。新型コロナ禍で高騰した住宅価格が下落し始め、住宅ローン金利も上昇しているためだ。
「最初に売り出したタイミングが2カ月早ければ、文字通り次の日には売れていた」と、ウィルソンは言う。ウィルソンと妻のジェイドが売りに出しているのは、ニュージーランドの北島にある風光明媚な人口1万3000人の町テアワムツにある自宅で、このほど、物件を購入してくれそうな人がやっと現れた。ただ、運よく売れたとしても、売却価格は当初の提示額より15%ほど低くなるだろう。
コロナ金融緩和の盛り上がりから一転
コロナ禍で雇用、賃金、生活状況に混乱が生じたことで、スウェーデン、イギリス、カナダ、オーストラリアなど、多くの国々で住宅価格は激しく変動した。だが、ニュージーランドほど荒々しい乱高下に見舞われた国はほとんどない。ニュージーランドは先日、景気後退入りした。
ニュージーランドでは以前から住宅が高価で不足してもいた。そこに、さらなる価格上昇、手抜き工事、金利上昇の厳しい影響が重なり、国政選挙が控える中、住宅危機が最大の争点に浮上している。