しまむら「どん底」から3年で復活遂げた3つの秘策 79歳「中興の祖」が再登板、商品改革にも大ナタ

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3年目に入った頃には、ティーンエイジャーから50代以上までをカバーできる約10のブランドが出そろった。そこからは「田舎のおばちゃんの服」と揶揄された、かつての姿は見られない。

3つ目の柱はコラボ商品。漫画やアニメのキャラクターコンテンツ商品と、ファッション系インフルエンサーなどと企画したアパレル商品に大きく分けられる。とくにキャラクター商品の需要は旺盛で、2023年2月期のコラボ商品の占める割合はしまむら事業の売上高1割強まで増加した。

コラボ商品はアパレルの「端境期」となる8月や2月を狙って投入されることが多い。旬のキャラクター商品はセールに依存しなくても安定した売り上げが見込めるため、季節による売上高変動を緩和することにも一役買っている。

商品力強化に加え、在庫管理も見直した。通常の仕入れは商談から納品まで5~6カ月かかるが、売れ筋商品の追加発注などのために40日の短納期生産の体制を整えた。トレンド衣料が多い10~20代女性向けのブランドでとくに活用されている。

2030年には国内ユニクロの規模目指す

しまむらでは提携工場と専用の生産ライン契約を、メーカーとは「特定時期までに使い切る」という生地契約を結んでいる。在庫リスクをしまむらが負う代わりに、必要な商品の最短40日生産を可能にした。鈴木社長は「価格優位性を保つには、小売りがリスクを取ることが重要」と語る。

商品改革で売上高が伸長しただけでなく、在庫整理の値引きロスが減ったことで粗利益率が上昇。チラシやテレビCMからネット広告へ軸足を移したことで、広告宣伝費も減少し、営業利益率は2020年2月期の4.4%から前期は8.6%まで大幅に回復した。

今2024年2月期は売上高6350億円(前期比3.1%増)、営業利益545億円(同2.4%増)と、3期連続の最高純益更新を計画する。2030年には売上高8000億円以上を目指しており、達成すればファーストリテイリングの国内ユニクロ事業(前2022年8月期の売上高が8102億円)と比肩する規模となる。

足元はしまむら事業で1418店舗、グループ全体で2213店舗(2023年2月期末時点)を展開。計画達成に向けて、毎年50~60店の新規出店を続け、既存店2~3%の成長を前提としている。

実現に向けたハードルは高いが、鈴木社長は「現状維持の発想では衰退する一方」と言い切る。しまむらは過去の成功体験を捨てることで、3年間の停滞のトンネルを抜けた。2030年に向けて、さらなる改革が進みそうだ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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