では「官製成功事例」の失敗には、どんなものがあるでしょうか。典型例が、地方都市の中心部の再生を目指す「中心市街地活性化」政策です。
岡山・津山市と青森・青森市はなぜ失敗したのか
実は、当初は全国区レベルで注目を集めた官製成功事例が、後に失敗が明らかになり、地域のお荷物となっている場合が少なからずあるのです。われわれAIA(エリアイノベーションアライアンス)でとりまとめた、「あのまち、このまち失敗事例集 墓標シリーズ」から、2つの都市をご紹介したいと思います。
1つは、岡山県津山市です。
「中心市街地活性化法」がスタートした際には、津山市は「500mコアのまちづくり」、というタイトルでそれこそ一世を風靡しました。このまちづくり事業のシンボルが「アルネ津山」という巨大複合施設でした。国からも支援を受け、「複合型再開発施設を中心部につくり、都市機能を集中化させることが今後の中心市街地活性化では有効である」という文脈で紹介され、全国区で成功した先進的な取り組み、として知られるようになりました。
しかし内実は、開発費が約270億円の巨大施設でした。当然地元の力だけでは開発できず、国や特殊法人を通じて、出資や補助金など多額の税金が投じられた「力技施設」だったのです。
同施設をめぐっては、開業後に工事費の未払い問題が発覚するなど、すぐに問題が露呈。さらに当初の事業計画と比べて、大きく下回る家賃収入で施設の運営を余儀なくされた第三セクターは、開業後は赤字決算を続け、ついには自治体による支援が必要な状況にまで経営が悪化してしまいます。
その結果、自治体が商業施設部分の一部を買い取ること等による、財政支援を実行。しかし、それがキッカケで市長がリコールされる騒ぎまで発展するなど、地域の中に政治的混乱まで生み出してしまいました。
もう1つは、青森県青森市です。
青森市も、2006年の中心市街地活性化法改正時、富山市と共に「コンパクトシティ」の成功事例として取り上げられました。同市の政策における中核複合施設はアウガです。高層階部分に図書館などの公共施設を入れ、低層部分には商業を入れた「官民合築施設」でした。
アウガは、さまざまな支援制度も活用し、約185億円を投じて作られたものの、やはり開業後から当初計画には及ばない家賃しか入らない状況で赤字が続き、経営はすぐに行き詰まります。
その結果、破綻を防ぐために、2008年には運営会社の債権の一部を青森市が買い取るなどの経営支援策を実行。その後、本政策を推進していた市長は落選。そして未だアウガは経営再建計画を幾度となく作り変えるなど、「長いトンネル」から抜けることができていません。
この2都市は、さまざまな成功事例集でも紹介され、新聞各紙にも報じられ、当時は全国から視察見学が殺到していたのです。都市機能の集約、地方都市の再生など、いずれも「ストーリー」としては大間違いではありません。しかし、結局やっていることが「中心部での財政出動型の巨大開発」であれば、それは昭和時代のような、拡大経済期にしか通用しない方法を現代に焼きなおしてやっているに過ぎません。
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