あなたの住んでるマンションの知られざる"寿命" 「長寿命化」への取り組みがグッと進む背景事情

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(筆者作成)

そしてそれぞれの供用期間に応じ、コンクリートの耐久設計基準強度が定められている。これはコンクリートの「質」の部分になる(上図)。

1㎟(1平方ミリメートル)あたりに何N(ニュートン)の力が加わったのかを表す圧力の単位N/㎟で示され、例えば短期のおよそ30年では18N/㎟、標準のおよそ65年では24N/㎟、長期のおよそ100年では30N/㎟……など、性能が異なるコンクリートが使用されるのである。先ほども少しふれたとおり、これらは設計当初に検討されるものだ。

お住まいのマンションの竣工図の特記仕様書に「コンクリートの耐久設計基準強度」という形で記載されている。特記仕様書の記載を参考にどれくらいの強度のコンクリートによって設計されているのかを見れば、居住するマンションが「どれだけ持つか」のおおよそ見当がつくはずである。なお、仕様書の閲覧は、管理会社へ申請の上、閲覧するフローが一般的だ。

ただし、メンテナンスを行いながら使用していくことで、計画供用期間を上回る期間利用することは可能になることも付け加えておきたい。建物としてのマンションには「寿命」があるものの、適宜メンテナンスを行うことでより長持ちさせることができることになる。

つまり、本来の寿命に沿ってマンションの修繕計画を立てることが大きな意味を持つとも言えるだろう。

機能や性能を向上させる「長寿命化工事」とは?

そこで不具合のある箇所を修繕するのみならず、将来にわたっての幅広い利用を加味し、より機能的に性能を向上させる「長寿命化工事」が注目を集めている。国も既存マンションの寿命を延ばす「長寿命化」への取り組みを後押しすべく長寿命化促進税制を創設した。

管理計画認定制度の認定を受けている竣工後20年以上経過した総戸数10戸以上のマンションが長寿命化工事を実施した場合、翌年度に課される建物部分の固定資産税額を減額するものだ。

国が長寿命化工事を推奨する背景には、高経年マンションが抱える課題が少なからず影響している。居住者の高齢化に加え、工事費など関連費用の上昇が続き、修繕積立金不足のマンションが増えているためだ。適切な大規模修繕工事が行われなくなれば、結果として建物の老朽化、空き家化が進んでしまう。

促進税制は、このような課題の解消をめざして創設された経緯がある。マンションを適切に維持するための積立金を確保し、長寿命化工事の実施に向けた「管理組合の合意形成」を支援する内容が盛り込まれている。

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