京都市から若者と子育て世代が離れていく理由 インバウンド誘致に奔走も市民の流出止まらず
人々の移動状況を示す社会動態を見ると、1990年以降2010年までは転出超過(転入者よりも転出者が多い状況)だったが、東日本大震災があった2011年からコロナ直前の2019年までは転入超過に転じていた。ところが、2020年と2021年はコロナ禍で外国人人口が大幅減となり、2700~3000人程度の転出超過となった(注:各年は前年10月から当年9月の集計数値)。
その反動もあり、2022年は3471人の転入超過となっている。ただ、ここで注意したいのは、転入超過の要因となっているのは主に留学生など外国人の転入であることだ。日本人に限ってみると2017年以降は転出超過が続き、近年は増加傾向にある。転入超過となった2022年にしても、日本人は4000人近い転出超過だった。
流出が多い子育て世代と就職世代
次に世代別の人口流出状況をチェックしよう。ここでは2つの世代に注目した。年代別の社会動態を示した下のグラフ(日本人のみ対象)に注目していただきたい。上部は転入、下部は転出状況を示している。
25~39歳の子育て世代の転出超過が顕著である。同時にこの世代の子どもである0~4歳も大幅な転出超過となっている。結婚期や子どもが幼少時に、近隣の滋賀県(大津市など)や京都府内の城陽市や宇治市などに転出するケースが多い。
その背景にあるのは、インバウンド増加に伴うホテル建設ラッシュによる市内の地価上昇で、住宅コストが高騰しているためだ。この10年で市内中心部の地価は2倍超に高騰。新築マンションで6000万円から1億円といった水準になっている。一方、JRで京都駅から3駅、13分程度の大津市内のマンション(68~84平方メートル)の最多販売価格帯は3700万円台にとどまっている。子育て世代が転出するのも当然だ。
子育て世代よりも下の20~24歳は、日本人だけでみても数百人規模の転入超過だ。就職を機に京都にUターンした若者が一定数いるうえ、全国各地から「京都企業」に就職した若者が多いということだろう。ただし、本来ならこの世代の転入超過をもっと増やせる可能性があるのだ。どういうことか。
京都は全国一の学生の街である。令和3年度学校基本調査の京都市分を市がまとめた結果によると、市内には大学等(大学院、短大を含む)が37あり、学生数は14万8218人と人口の1割強に達する。毎年3万5000人程度の卒業生が社会に出て行くということだ。
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