噛む菓子「グミ>ガム」になった令和ならではの訳 グミがガムの市場を奪ったと考えるのは短絡的

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2つ目はWBC効果。「WBCの試合中、各国の代表選手がけっこうガムを噛んでいました。日本選手団のベンチにキシリトールガムのボトルが積んであったり、外国人選手が、お気に入りのお菓子の1つとしてガムを挙げていた、といったエピソードがツイッターなどで流れたりしています」と福田氏。実際、WBC期間はガムの出荷割合も前年同期間比で130%にも達していたという。

3つ目が復刻ガムの人気だ。近年、若者の間で昭和の商品やデザインが人気になっている。昔のデザインで復刻した板ガムを若い世代が新鮮に感じて買ったり、ツイッターなどで話題にするという流れが出ている。昨年夏には、全国のロフトで復刻ガムの販売、および復刻ガムのデザインをモチーフにした雑貨を販売するなどした。

復刻ガム
ロフトとコラボして、復刻ガムだけでなく、グッズなども販売した。写真は2022年7月銀座ロフト売場画像(写真:ロフト提供)

また、皮肉なことに、明治のガム撤退ニュースから、改めてガムに注目が集まり取材も増えているという。

ガムとグミの決定的な違い

改めてガムとグミそれぞれの魅力を考えてみよう。

ガムは機能性や健康イメージが強い。噛むことで意識を覚醒させ集中力が高まる。口臭や虫歯予防として利用する人や、ダイエット目的でガムを噛む人もいる。コロナ明けで消費が伸びたように、実用性を求める消費者は今も多い。

グミは映えとさまざまなフレーバーの楽しさがある。だから情報発信もしやすい。味を楽しむ点でも、グミのほうに軍配が上がる。しかし、長時間噛み続けようと思えば、何個も口に入れなければならない。

どちらにも魅力があり、どちらも足りない点はあるが、現状、グミのほうがより注目を集めているとするならば、それは露出の違いかもしれない。前述の通り、グミは映えの時代の象徴的な菓子ではないだろうか。嗜好品であるだけに、情報発信力が人気を左右するのだ。映え需要を超え、新たな消費者を獲得することができるのかが、ガム復活のカギを握りそうだ。

(*1)出典:※インテージSRI+ ガム市場 2022年4月~2023年3月 累計販売金額シェア

(*2) 出典:※インテージSRI+ ガム市場 2023年1/30週~3/27週 累計販売金額(前年同期間対比)

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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