IT大手が入社試験に採用「フェルミ推定」の威力 仕事や生活の場で、考えて見積もる力を養う

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「④抽象化(モデル化)」

③の分解で洗い出した要素を組み合わせて、推定量を求めるための計算式をつくります。今回の場合は次のような式になりました。

日本の年間書籍売上(円/年)
= 日本の人口(人)× 読書習慣がある人の割合
× 書籍1冊あたりの平均売値(円/冊)
× 読書習慣がある人1人あたりの年間購読冊数[冊/(人・年)]

年間の書籍売上を決定する要素はほかにもあります。景気や生活習慣も加味する必要があるかもしれません。実際、新型コロナの流行による「巣ごもり需要」は書籍の売上に影響したようです。

さらに「読書習慣がある人の割合」や「書籍1冊あたりの平均売値」を十把一絡げに考えてしまっていいのかという懸念もあります。世代別とか、本の種類別に「加重平均」を用いるべきだという意見もあるでしょう。

しかし、そうした複雑な要因を考慮しすぎると、式をつくることがとても難しくなってしまいます。ですから思い切って(不要と思われる部分はそぎ落として)モデル化するという大胆さも必要なのです。

モデル化は、見積もりたい値をいくつかのデータや推定量の掛け算で得られる値に「変換」する作業です。最初は「こんなに単純にしちゃって大丈夫かなあ」とか、「こんな式でいいのかな?」と不安になるかもしれません。

でも、とにかく値を出してみましょう。大きく外れているようなら、そこで改めて検証し、改善していけばいいのです。「ケタ違い」にならなければ御の字くらい考えて「えいやっ!」とやってみることに価値があります。

「⑤数値化&算出」

推定に必要なデータと推定量は以下の通りです。

①日本の人口(データ)②読書習慣がある人の割合(推定量)③書籍1冊あたりの平均売値(推定量)④読書習慣がある人1人あたりの年間購読冊数(推定量)

次のように数値を考えます。

①日本の人口:おおよそ1億2000万人

②読書習慣がある人の割合:活字離れが言われて久しいものの、子どもからご年配まで読書習慣のある人はまだまだいます。そこで読書習慣がある人の割合は70%にします。

③書籍1冊あたりの平均売値:週刊誌やコミックなら500~800円、単行本なら1500円前後で、かなり開きがありますが、ここは大胆に書籍1冊あたりの平均売値は1000円ということにします。

④読書習慣がある人1人あたりの年間購読冊数:個人差が大きいところだと思いますが、毎週決まった雑誌を買う人もいれば、1年に1~2冊という人もいるでしょう。また、好きなコミックは、出れば必ず買うという人も少なくありません。そこで読書習慣がある人、1人あたりの購読冊数は月に1~2冊、年間では20冊ということにします。

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