有給休暇は自由にとれない?
相談:有休を申請したら「忙しいからダメ」と言われました!
有給休暇の取得は労働者の当然の権利ですので、基本的には会社は拒むことができません。でも、「事業の正常な運営を妨げる場合」は、会社が取得日の変更を求めることができます。意外と知られていませんが、これを「時季指定権*6」といい、会社に対して配慮した仕組みになっています。
例えば、業務の繁忙期で明らかに人手がいる場合や、直前で申請された場合に代わりのスタッフの手配ができないときは、上の要件に当てはまる可能性が高いでしょう。
また、連続して長期に申請した場合や、同じ日に申請しているスタッフがいる場合も、会社の規模や仕事の内容によって合理的とみなされる場合があります。
ただし、申請のたびに毎回「忙しいからその日はダメ」と言われてしまっては、実質的に取れるタイミングがないということになりますよね。
慢性的な人手不足の会社はこのような回答をするかもしれませんが、これは合理的判断とみなされず、時季指定権の濫用として労働基準法違反に問われます。
また、会社が指定した時期が産休に入った後や、退職日の後など労働義務がそもそもないようなタイミングであれば、これも労働基準法違反にあたります。この場合、使用者(労働基準法における事業主や経営者等のこと)には6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
有給休暇を取得したいときは、希望の日付がわかったタイミングで、まずは申し出ましょう。事前に申請を受けている場合は、会社としてもその日に取得させるために最大限の配慮をすることが求められています。
例えば、事前に取得申請を受けていたにもかかわらず、会社が直前に変更を求め、それに従わずに休んだ社員を懲戒したという裁判例*7もあります。これは会社に非があるとして、社員の訴えが通りました。
このように、繁忙期であっても事前に伝えておけば、会社はその時季に取得できるように配慮をする必要があるのです。
*7 高知郵便局事件(最高二小昭和五八年九月三十日判決)
年頭に申請して認められていた有休の取得日を、業務繁忙を理由に使用者が取得二日前に変更し、それに従わず欠勤した社員に対して戒告処分を行いました。これを不服として社員が訴えたところ、「不当に遅延した時季変更権の行使は許されない」と社員の主張が通りました。
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