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まとまらない相続「長男」が弟妹へつづった手紙 「内容証明郵便よりも、虎屋の羊羹」の深い意味

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  • 石渡 英敬 プルデンシャル生命保険エグゼクティブ・ライフプランナー
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「3つのステージ?」

「はい。1つ目のステージは、弟さん妹さんとの清算です。今、和田さんはどっぷりとこのステージに浸っておられます。お父さまの相続をまとめ、かつ、分散した株式を買い取る。これは、簡単なことではないでしょう」

私が和田さんに1枚の図をお見せすると、和田さんはじっと見て言いました。「うむ。で、2つ目は?」

「2つ目と1つ目のステージは実はセットです。和田社長のお望みはなんでしょうか? 事業を継ぎたいとおっしゃっているご自身のご長男に、しっかりと経営のバトンを渡すことではないですか?」

「そのとおりだ」

「であれば、第2ステージは、まずは第1ステージを乗り越えたうえで、和田さんからご自身のご長男への株式の承継に備えた対策を練ることです。事業承継税制や除外合意など、国が準備した制度を上手に活用しない手はありません。そのためにも、第1ステージをクリアしないと第2ステージは始まらないのです」

「確かに。そして第3ステージは?」

「はい。これまで和田さんは創業者であるお父さまとともに、30年以上の長きにわたって会社を成長させてこられたわけです。再来年には70歳になられます。まずは第1ステージをクリアし、さらに第2ステージもクリアしていただいて、第3ステージでは和田さんご自身の人生を謳歌していただきたいのです」

「私の人生か……」

「今の和田さんは、お父さまが残された事業と遺産にがんじがらめになられ、弟さんと妹さんとのもめごとの中に生きておられます。そこから早く脱して、奥さまやご自身の3人のお子さま方、お孫さんと、人生を楽しんでいただきたいと思っています。そのために、私はライフプランナーとしてお手伝いをさせていただきます」

このとき、和田さんの「心のスイッチ」が入った音が、聞こえた気がしました。

秘密保持契約を和田さんから求められ、より深いコンサルティングに進ませていただくことになりました。

内容証明郵便よりも、虎屋の羊羹

その後、私は和田さんと週に一、二度、打ち合わせを重ねていきました。「2人に頭を下げるといっても、どうすればいいかな?」

「私に1つアイデアがあります。『肉筆の手紙』を書かれてはいかがでしょうか? 面と向かって詫びる機会をつくることは難しいと思いますので、これまでの心のすれ違いを文章で詫びて、これからの思いを伝えるのです」

「なるほど。トライしてみるか……」

手紙の作成には、和田さんの奥さまやご長男にも加わっていただき、顧問税理士や弁護士の視点も加えて、鳩居堂の高級和紙の便せんに、ご自身で一文字一文字書いていただきました。

和田さんのご了解のもと、ほぼ原文のまま掲載します。

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【手紙の内容はこちら】

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