まとまらない相続「長男」が弟妹へつづった手紙 「内容証明郵便よりも、虎屋の羊羹」の深い意味
B男さん、C子さん、2人に今の私の思いを率直にお伝えします。
まず、父の相続に際し、ここまでの話し合いの進め方について、お詫びします。
本来は、父が亡くなる前に、財産の相続について話あっておくべきでしたが、長男として父にうまく働きかけができなかったことは残念に思っています。
父の相続については、税理士のS先生とN先生にご尽力いただき、遺産分割案をまとめていき、近日中に調印をさせてください。
併せて、検討をお願いしたいことがあります。B男さん、C子さんが保有する会社の株式についてです。
今現在の会社のおかれている状況はコロナ禍という激しい逆風もあり、昨年F社は赤字決算となりました。かつ、時代の流れは加速してきており、企業経営は、今非常に厳しい局面を迎えています。父が苦労して大きくしてきたF社グループを、よりよい形で次世代に残していくにはどうすればよいか? つねに考えています。
私がF社の社長となってから、もう30年を超えました。次世代にバトンを渡す準備にかかっています。社員やF社を取り巻く多くの関係者が見守っています。この世代交代も多くの課題を抱えています。
その1つとして、株式の分散が進んでしまうと、会社を引き継ぐ子どもの世代やその後の世代にとって、大きな負担となるかもしれません。そのために今、父の遺産分割協議書の調印と併せて、F社と資産管理会社の株式を私に売却してほしいと考えるのです。
B男さん、C子さんの今の株式持分は、父があなたたちのためにと熟慮したうえで配分した、ある意味での遺言書のようなものだと思うようになりました。公正な価格で買い取ることが、父のB男さんC子さんへの思いを尊重することであると考えています。
相続税評価額で合意してもらえれば、1人〇億円、2人合わせて〇億円で買い取ることになります。私にとって換金性の乏しい自社株をこれ以上の価格で買い取ることは、現在の厳しい経営環境や、今後の事業承継でのさらなる課税を考えると、会社にとっても大変厳しい状況になることを理解してもらいたいのです。このお願いを受け入れてもらえたら感謝に堪えません。
C子さん、母と同居してくれていることと、手厚く面倒を見てもらっていることには心から感謝しています。ありがとう。母の余生を家族みんなで温かく見届けていきましょう。
令和××年×月×日 Aより
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