茹でガエルにならず「組織を飛び出す」生き方とは 塀の中に落ちないように塀の上を上手に歩く
― 吉田茂が田中角栄のことを「あいつはいつも(刑務所の)塀の上を歩いている」と言ったという話があります。先生の場合は、東大という組織の塀の上を歩かれてきたということですね。
養老:同じなんじゃないですか。
名越:なんでも、そういうことありますよね。古くはある若手の新興経営者が収監された事件だって。
養老:彼自身が言ってたけど、日経の「私の履歴書」を刑務所の中で読んでいたら、「経済人の半分ぐらいは刑務所に入っているよ」って。
名越:境界線で売り買いはされているわけで、極端な言い方かも知れませんが、価値のあるものは境界線で交換するからお金を生むわけですからね。
養老:言ってみりゃ、働く人は同じ目に遭うんですよね。何もしなければ遭わない。
― 今回の東京五輪汚職をみても、組織の利益のために立ちまわった人が事件に引っかかっています。
養老:だから、みんな働かなくなっちゃうわけですよ。ルールをきつくし過ぎると。
社会を殺しているようなものだね。実際、元気がなくなっちゃった。それは大いにあると思う。僕が普通に対談している相手がみんな(炎上して)公表できなくなっちゃったんだから(笑)。
名越:活躍している人ともいえるわけだ。よかった僕はあまり活躍していなくて。功成り名遂げて、ユーチューブをやっている人でバリに住んでいる人がいるんですけど、その人を見ていて思うのは、大きな企業なんかつくったら、あらぬ力で絶対に潰されると。その方がこう言っていました。
「この人は才能あるなと思ったら、みんなを社長にしてあげればいい。日本みたいな国はそれがいい」というのです。この人分かっているなあと思いましたね。出過ぎない杭をいっぱいつくってあげるわけです。優しい助言をしているなと思いましすね。
― ルールの厳格化で社会が弱っているというお話が出ましたが、いま、大きな組織を見ると定年延長の動きがある一方で、早期退職が続出しています。そうした動きで組織自体がどんどん弱体化しているように見えます。
養老:それはだいたいもう、多くが斜陽産業だからしょうがないんじゃないですか。炭鉱労働者がいくら頑張っても石油が入ってきたらどうにもならない。
名越:弾かれた方がかえって良かったという場合もあるだろうし、ずーっと組織にしがみついていたところで、組織自体が沈んでいくこともありますからね。
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