55歳でフリー、元NHK武田真一アナ決断の背景 職員時代から一転、24時間妻と過ごす生活に

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「フリーという明日はどうなるかわからない身になって、先の見えない大海原に漕ぎ出してみようと思った。妻は退職について反対は一切せず、不安もまったく口にしませんでした。人生は一度きりなんだから、やりたいならやってみたらいい、と強く背中を押してくれました。サラリーマン時代は朝、家を出てそれきりでしたけど、今は妻と24時間ずっと一緒に過ごしています」

フリーアナウンサーとして働くプレッシャー 

NHK時代とは生活も意識も変わった。番組は月曜~金曜の朝9時からで、局入りは朝6時半。打ち合わせを経て、2時間強の生放送に臨む。

(撮影/廣瀬靖士) 

「実は朝の番組を担当するのはこれが初めてなんです。寝坊=番組に穴をあけることになる。月給ではなく一本いくらで仕事をしていますし、ものすごいプレッシャーですよね。朝は5時半起きで、夜は10時に寝るようにしています。お酒も平日は控えようと思っているけど……、ついつい飲んじゃいますね。といっても夕方にビールを一杯飲むくらいで、寝るころにはもう醒めている感じですけど(笑)」

『DayDay.』のキャッチコピーは“おしゃべり感覚で見られる爽快・情報エンタメトークショー”。スタジオでゲストを交え、肩のこらないトークを繰り広げていく。“報道のエース”といわれたNHK時代とは違い、扱う情報も芸能ニュースやトレンド、街ネタと硬軟幅広い。SNSには「NHKを辞めてこんなことがやりたかったの?」という声も寄せられたが、そこですかさず「そう! そのとおりだよ。これがやりたかったのですよ」と返す一幕も。

「新しい番組を作ること、お喋りをすること。僕がやりたかったのはこの2つで、みなさんと自由にお喋りできる番組を作りたいという思いがありました。今の時代は何か言うとすぐ炎上するので、お喋りすることに臆病になっている人も多いはず。そうではなく、お喋りの価値を高めたい。何を言ってもいいんだという心理的安全性があり、その上で互いに言葉を重ね、新しい理解や発見、価値観を生み出していけたらと。日本は資源もないし、今後は新しいアイデアで勝負しなければいけない。その源泉になるのがお喋りだと僕は思っているんです」

MCのパートナーは南海キャンディーズの山里亮太。芸人とのタッグも初めての経験で、「山ちゃんはもう“スゴイ!”のひと言です」と大絶賛。番組冒頭はMCのトークから始まり、そこでの気づきも多いという。

「山ちゃんは相手が言ったことに対して瞬時に違う方向から光をあてて返してみせる。単にボキャブラリーが多いだけではなく、話術の天才だと思うし、よくこんなに面白いことが次から次へ繰り出せるなと舌を巻いてしまいます」

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