「英語と中国語の覇権争い」10年後の勝者はどちら 中国語が「世界共通語」になる日はやってくるか

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五味:アフリカに行ってみると、中国の存在感は絶大だと言います。ただし、アフリカ大陸には、欧米メディアの特派員はあまりおらず、中国によって実際に何が行われているのかが報じられる機会は多くありません。日本のメディアの特派員も、カイロやヨハネスブルクといった大都市にしかいないのです。

そうなると、中国がアフリカ大陸で何をしようが、西側諸国はあまり気付かないという状況が生まれます。そしてあるとき気付いたら、中国が経済援助とともにアフリカ大陸で中国語を普及させ、同時に〝中国抜き〟では生活が成り立たなくなっている様子を目の当たりにする……。これが現在の状況と言っていいでしょうね。

上乃久子/1971年岡山県生まれ。1994年に四国学院大学文学部英文科卒業後、同大学の事務助手として勤務。東京都内のバイリンガル雑誌社、翻訳会社、ロサンゼルス・タイムズ東京支局、国際協力機構(JICA)を経て、現在、ニューヨーク・タイムズ東京支局にて記者として活躍。サイマル・アカデミー同時通訳科修了。著書に『純ジャパニーズの迷わない英語勉強法』(小学館)(写真:横田紋子)

上乃:今まであまり振り向かれなかった地域の人たちが、自らが学んだ中国語を活かし、経済的に成長してもう一段高いレベルの生活を目指そうとしているといった感じでしょうか。そう考える人たちは、これからも増えていきそうですね。

五味:そうだと思います。かつて、アフリカのエリートたちは皆フランス語を流暢に話していました。でも今は、「フランス語が話せても何のメリットもない」って言っているそうです。そこは利にさといというか、しっかりと考えている。こうした目端の利かせ方は、これからの日本人にも必要かもしれません。中国語が日本に入ってきたら、中国文化に取り込まれてしまうのではないかと心配するのではなく、中国のスケールメリットを活かして利用していくくらいの気概があってもいいでしょう。

中国語ができると「何かと得する」という今の世界の現実

上乃:五味さんは中国での駐在経験もあり、中国語を仕事でも使っていますけど、ご自身が普段の生活でメリットを感じることはありますか。

五味:やはり中国語は、世界で最も人口の多い国の1つである中国で話されているだけに、思わぬところでメリットを感じたりします。

以前に台湾に行ったとき、バスを待ちながら中国籍の妻と中国語を話していると、白タクの運転手が近づいてきて、「大陸から来たんでしょ?」と聞かれました。「格安で現地を案内しますよ」というのです。

中国は経済力と軍事力にものを言わせ、傍若無人に振る舞います。特に台湾に対しては、ことあるごとに圧力をかけてきます。日本では台湾有事がいつ起きるのか関心が高いですね。

当然、台湾では中国本土政府への反発は強烈ですが、中国人観光客は気前良くお金を使うので、台湾ではその経済力に期待する人が多いのも事実です。

あくまでも個人の体験レベルでの話ですけど、今の時代、中国語をしゃべれると、得をすることが多い世の中になっているようです。その点、英語を話すのは当たり前になっているので、ものすごく高いレベルでもない限り、そこまでのメリットはないような気がします。旅先で中国語ができると〝別の世界〟が見られるというのは、面白いと思いましたね。

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