国内最大の石油化学プラント構える三菱化学の鹿島事業所が5月20日から順次再開、フル稼働は6月下旬以降【震災関連速報】
三菱ケミカルホールディングスは8日、東日本大震災の直後から操業を停止している三菱化学の鹿島事業所(茨城県神栖市)について、5月20日ごろから順次、生産を再開できる見通しになったと発表した。同日までにボイラーを含む自家発電設備が一部復旧。エチレンなどの製造設備や港湾施設を含む入出荷設備の補修を急ピッチで進め、国内最大の石油化学プラントの復活を急ぐ。
鹿島事業所では、石油化学製品の基礎原料となるエチレンやプロピレンなどを製造するエチレンプラント2基を構える。このうちエチレン換算で年産45.3万トンの第2プラントが5月20日ごろの再開を目指して復旧作業を進めている。同37.5万トンの第1プラントは、今年度に計画していた法定定期修理が終わる6月27日に再開できる予定だ。「大規模な余震や津波など、復旧作業を大きく妨げる事態が起こらないことを前提にしている。原料となるナフサの調達についても加味している」(三菱化学広報室)という。
三菱化学は3月23日に鹿島事業所の稼働再開には最短でも2カ月以上を要するとの見通しを公表していた。今回、明確な再開スケジュールが明らかになった。
鹿島事業所はエチレン換算で国内全体の1割強の生産能力を持つ。生産規模は国内最大だ。エチレンプラントは石油から抽出されるナフサ(粗製ガソリン)をもとに、基礎原料を製造。鹿島コンビナート内では、これらの原料がパイプラインを通じて20数社の化成品メーカーに渡り、合成樹脂や合成ゴム、合成繊維原料、界面活性剤などの多種多様な化成品となる。三菱化学は”心臓部”の役割を果たしている。
鹿島コンビナート内には信越化学工業やJSR、カネカ、クラレ、旭硝子、三井化学などがプラントを持ち、各種化成品を生産。最終的には自動車や電機などの部品となる素材も多く、最終製品の生産に影響が及ぶことが懸念されている。
再開の見通しが立ったとはいえ、5月下旬まで原料供給が止まった状態が続けば、化成品メーカーの在庫が次々と尽きる可能性は十分にある。すでに、合成ゴム大手のJSRは鹿島工場の操業停止が長引けば、自動車のベルト類などに使われるエチレンプロピレンゴムの供給が4月中旬から支障を来す可能性があることを表明している。三菱ガス化学は半導体の洗浄や紙パルプの漂白などに使う過酸化水素で、国内生産能力の大半が鹿島にあり、それに関連する業界への影響が懸念されている。
また、フル稼働への復帰が6月末となることで鹿島コンビナートで生産される化成品の需給がタイトな状態が続くことが予想される。とはいえ、再開について一定の見通しが立ったことは明るいニュースといえるだろう。
(武政 秀明 =東洋経済オンライン)
(写真は被災前の鹿島コンビナート)
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