武田薬品が京大と提携、iPSで何をするのか 10年で200億円を提供、共同研究の狙い

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研究資金のために、マラソンを走ったこともある山中教授。1回で1000万円集めたことも

さらに、年間予算が約40億円(2013年度)のCiRAにとって、単純計算で1年当たり20億円の研究費が提供される今回の提携は、資金面でも非常に大きな意味を持つ。CiRAでのiPS細胞研究の中には、パーキンソン病の再生医療など、基礎研究を経て臨床研究に足を踏み入れようとするものも出てきている。「必要な人員は右肩上がりで、これから急速におカネが必要になる」(山中教授)。

優秀な研究者や技術者を安定雇用するための資金集めは山中教授にとって大きな課題であり、4月初めには、楽天と米セールスフォース・ドットコムから「iPS細胞研究基金」に2.5億円ずつの寄付を受けてもいる。

相次ぐ企業参入

武田に限らず、国内ではiPS細胞研究や再生医療への参入が相次いでいる。3月末には富士フイルムがiPS細胞を開発・製造する米国バイオベンチャーのセルラー・ダイナミクス・インターナショナルを買収。富士フイルムは子会社に再生医療製品の人工軟骨、人工皮膚を製造・販売するジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを持ち、国内で再生医療に最も積極的な会社の一つだ。

大手ではアステラス製薬がCiRAと共同で腎臓の再生医療に関する共同研究を行っている。大日本住友製薬も2020年度の製品化を目指し、慢性期脳梗塞や目の難病である加齢黄斑変性の再生医療製品を開発している。中外製薬は3月に米国ベンチャーのアサーシス・インコーポレーテッドから脳梗塞の細胞治療医薬品の日本での開発販売権を取得した。

再生医療ブームが巻き起こる中、最大手の武田はこれまで目立った取り組みを見せてこなかったが、CiRAとの長期にわたる提携で一気に存在感を高めた。2015年3月期の研究開発費見通しが3500億円の武田にとっては、共同研究に投じる研究費は、単純計算で年間20億円と微々たるものだが、「われわれが長期で成長するには、サイエンスが必要だ」(ウェバー社長)。iPS細胞のビジネスチャンスに、今後もさまざまな企業が食いつきそうだ。

(撮影:風間仁一郎)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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